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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

地下を走る専用物流システム——スイスの挑戦と、日本での可能性

小型で統一規格の専用車両だけが走る地下物流専用道——そんな未来的な構想が、いまスイスで現実のものになろうとしている。プロジェクト名は「Cargo Sous Terrain(CST)」。これは、地下鉄のように構築された3車線のトンネルネットワークを通じて都市間をつなぐシステムで、現在は第1段階として約70kmにわたるヘルキンゲン・ニーダービップ〜チューリッヒ間の建設準備が進行中だ。

www.swissinfo.ch

専用物流システムイメージ図(本当はもっとかっこいいです。)

CST システムの仕組み

このシステムの中では、荷物を積んだ自律走行型の専用車両だけが時速30kmで24時間体制で走行する。人間も一般車両も関与しない完全管理空間であり、各「ハブ(中継拠点)」には垂直昇降機が設置され、地下から地上へパレットやコンテナを持ち上げ、そこから地上の配送トラックに積み替えられてラストワンマイルを担うという仕組みである。

車両は2個のEURパレットを運搬できる規格で設計されており、冷凍・冷蔵輸送にも対応する。システム全体は100%再生可能エネルギーで運用される予定だ。

プロジェクトの現状と将来計画

2031年には第1区間の開通を目指し、2045年までにはコンスタンス湖からレマン湖までの総延長500kmのネットワーク構築を計画している。

興味深いのは、これが完全に民間主導のプロジェクトであることだ。スイス連邦議会は2021年12月に「地下貨物輸送連邦法」を可決し、補助金なしでの建設・運営を前提とした法的基盤を整備した。

デメリット・課題の現実的検討

1. インフラコストの重荷
地下にトンネルを掘り、3車線の空間を構築し、ハブや昇降機を配置する。これには莫大な初期投資と維持コストが必要である。

2. 専用システムの運用リスク
他のインフラとは互換性のない専用規格の車両・設備を導入する必要があり、保守運用も全て専用対応となる。技術的トラブルや部品調達リスクが集中する。

3. 積み替えコストと時間ロス
地下車両と地上トラックとの積み替えが必須であり、オペレーションコストや時間ロスが生じる。物流におけるシームレス性が損なわれる可能性がある。

4. ラストワンマイルの根本的課題
地下で輸送しても、最終的な配達には依然として地上の輸送インフラが必要である。都市部の配送トラック問題を完全には解決できない。

メリット・可能性の評価

1. 交通渋滞からの解放
地下空間の専用道であるため、渋滞や交通事故のリスクとは無縁。AI による統合制御も容易で、定時性の確保が期待できる。

2. 省人化・自動化の徹底
完全自動運行が前提で設計されており、長期的には人手不足対策として有効。

3. 環境負荷の大幅軽減
CST のライフサイクル評価では、将来の重貨物車技術と比較しても、環境・気候影響が大幅に少ないことが実証されている。100% 再生可能エネルギーでの運用により、CO₂排出削減効果は顕著である。

4. 都市空間への非干渉性
地下に設置されるため、地上の景観や住環境に干渉せず、騒音問題からも解放される。

日本の物流インフラとの比較

一方で、日本には既に「鉄道貨物網」という強力な物流インフラが存在している。JR貨物は貨物駅で荷物を積み替え、旅客列車と同じ線路(または専用線)を用いて輸送する方式を採用している。

日本の鉄道貨物の特徴と課題

強み:

  • 既存インフラの活用により建設コストが抑制されている

  • 長距離大量輸送において極めて高い効率性を実現

  • トラック輸送と比較して大幅なCO₂削減効果

課題:

  • 法規制が厳しく、鉄道事業の新規参入や柔軟運用が困難

  • 1編成が大規模になる傾向があり、荷捌きがピーク集中する

  • 一般旅客列車との線路共用により、ダイヤ調整に制限が多い

  • 「物流の2024年問題」への対応として期待されるも、輸送能力の制約で完全な代替は困難

JR貨物は2025年度に335億円の設備投資を計画し、「総合物流企業」への転換を図っているが、根本的な課題解決には時間を要する状況だ。

CST型構想が日本で適合しうる条件

以下のような条件が揃えば、CST型のシステムも検討に値するだろう。

1. 物流拠点間の短距離自動輸送(2〜5km程度)
大規模物流センターや配送センター間を専用通路で結び、トラックに代わって地下自動輸送を行う形態。

2. 大手物流企業による自社専用インフラ
日本郵政Amazon楽天物流など、十分なスケールとラストマイル網を持つ企業が都市内拠点間輸送の自動化を目指す場合。

3. 地上空間飽和地域での限定導入
東京・大阪のように地上空間が飽和しており、新たな道路インフラ建設が困難な場所での補完的役割。

4. 環境規制強化への対応
都心部でのトラック規制強化や脱炭素化要求が高まった場合のクリーン物流手段として。

5. 法制度の柔軟化
貨物専用インフラゆえに、既存の鉄道法などからの緩和措置が講じられる場合。

結論:革新性と現実性のバランス

Cargo Sous Terrainは、物流インフラとしては極めて先進的でビジョナリーな取り組みだ。

ただし、

少なくとも日本においては、技術的魅力と経済合理性は必ずしも一致しない。既存インフラ(鉄道・道路)の最適化と再活用を優先し、CST型システムは「局地的」「補完的」な形での段階的導入が現実的な道筋となるだろう。

このプロジェクトは、「未来の物流」の一つの可能性を示す意味で極めて興味深い。しかし、その実装には、冷静な制度設計と、圧倒的な初期投資を正当化する明確な社会的・経済的メリットの実証が不可欠である。

では、あなたはこの地下物流システムをどう評価するだろうか?


参考文献・情報源

学術的・公的資料

技術・プロジェクト関連資料

  • IEEE Spectrum. (2023). "Switzerland Moves Ahead With Underground Autonomous Cargo Delivery." Technical analysis of CST implementation.
  • Simplan AG. (2023). Cargo sous terrain: Simulation of an underground logistics system in Switzerland. System modeling and performance analysis.
  • RailFreight.com. (2024). "Swiss underground rail freight project enters audition phase." Current project status and technical specifications.

日本の物流インフラ関連

  • 日本貨物鉄道株式会社. (2025). 2025年度事業計画. 設備投資335億円、総合物流企業への転換戦略.
  • 東洋経済オンライン. (2023). 「JR貨物にとって『物流の2024年問題』はチャンスか」. 鉄道貨物輸送の現状と課題分析.
  • 国土交通省. 物流政策統括官室. 物流業界の構造的課題と政策対応.

比較分析・評価

  • Swiss Federal Office for Spatial Development (ARE). (2021). Swiss Traffic Perspectives 2040. 貨物輸送量31%増加予測と既存インフラの限界.
  • Swiss Federal Roads Office (FEDRO). Traffic Census data and freight transport growth projections.
  • 各種物流専門媒体による2024年問題、モーダルシフト関連記事・分析レポート.

本稿は2025年6月時点での公開情報に基づいて作成しています。プロジェクトの進捗や技術仕様は変更される可能性があります。