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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

イオンモール東久留米、出庫に3時間の真実

― 交通マヒを招く構造か?計画の中身を読み解く ―

週末にイオンモール東久留米を訪れた人から、「駐車場から出るのに3時間かかった」という声がニュースサイトで注目を集めました。本当に交通設計が破綻していたのでしょうか?この記事では、環境影響評価書や道路構造、実際の交通混雑度など、公開データをもとに計画と現実のギャップを整理しながら検証します。

地図はこちら▶(外部リンク)

交通MAP

モールの構造と道路配置:T字路が鍵を握る

イオンモール東久留米は、東西に伸びる五小通り(市道209号線)と、そこから南へ分岐する市道(東3・4・18号線)がT字交差する地点に立地しています。

  • 店舗本体(屋上駐車場あり)は東側
  • 立体駐車場は西側に配置
  • その間をデッキと車道で接続することで敷地内の回遊性が確保

駐車台数は約1,700台で、内訳は西側立体駐車場に約700台、店舗側に約1,000台。なお、自動車来店率は約6割と見込まれ、一日あたりのべ約14,000台分の駐車利用が想定されています。

道路の状況と混雑度:意外に"計算通り"?

周辺道路はすべて片側1車線で、交差点に右折専用レーンも右折信号も存在しません。そして、渋滞発生の基準となる交差点需要が100%を超えると渋滞とされる中で、各方向の混雑度は以下の通り想定されています:

  • 東方向:59%
  • 西方向:30%
  • 南方向:75%

また、南側の市道と新所沢街道の交差点では71%とされており、ギリギリ渋滞未満の設計となっています。つまり、計画上は交通マヒを招く構造ではないということです。

出入口の設計と回遊性

駐車場の出入口はすべて「左折入庫・左折出庫」を徹底しています。 以下の3カ所に配置されています:

  1. 北側の東西道路(店舗側)に1カ所
  2. 南側へ向かう道路の東側に1カ所
  3. 同じくその道路の西側に1カ所

これにより、来場者は駐車場所にかかわらず、最も空いている出口を自由に選べる設計になっています。建物間の接続デッキによるスムーズな回遊性も確保されています。

出庫キャパシティは?「3時間渋滞」は想定内?

イメージでどれだけの車が通行できるか ざっくり計算ですが1車線道路で一時間600台。でも右折レーンがが無いので0.5を掛けた一時間あたり300台が走行できます。

この条件で、イオンモール東久留米周辺の出庫ルートを考えると

  • 東側:300台/時
  • 西側:300台/時
  • 南側:300台/時

合計最大:900台/時

ただし、イオンから出入りしない車もいるため、実際の出庫処理能力は約450台/時と見積もります。

そこで、最初の「出庫に3時間」ニュースとこの一時間あたり450台/時間出られると加味すると、筆者の憶測ですが計画通りとも言える結果と言えそうです。

なんと駐車場無料なのに6割しか車で買い物に来ない

モールが西武池袋線ひばりヶ丘」駅から約2kmという絶妙な距離にありながら、 このイオンモール駐車料金が無料です。東京都に近いのに無料とは信じられませんでした。

しかし、思うとバスが充実している上に、東京都は車保有率が低いため、バスでの来店に抵抗がないのかもしれません。

郊外型モールとしての立地バランスが絶妙で駐車場を無料で利用できるという事でしょう。

最後に:ちょっとの譲り合いが、大きな流れを生む

通常右折レーンがない道路では、対向車の流れによって右折車が滞留してしまい、全体の処理能力を下げてしまうことがあります。 筆者の憶測ですが、実際の現場では、対向車が一時停止して譲る文化がある程度根付いており、計画値である450台/時を上回る処理能力になっているように感じられます。

立地上も絶妙だったと言えそうです。


P.S. 今後の道路改良と渋滞緩和に期待…だけでは済まない?

令和4年1月にモール南側の市道新青梅街道と接続されたました。さらに、T字路交差点から北側への延伸計画があり、将来的には現在のT字路が十字交差点化される可能性があります。これにより、出庫の選択肢が広がり、交通分散による渋滞緩和が期待されているのですが——。

ここで重要なのは、「北側に交通分散が起こる=渋滞緩和」とは限らないという点です。

むしろ、北方面への道路が開通すれば、南北通過交通の新たな動線が形成され、イオンモール東久留米の前面道路は、単なるアクセス道路から地域幹線の一部へと性質が変わる可能性があります。

その結果、現在の片側1車線・右折レーンなしの道路設計では通過交通と来店車両が競合し、交通需要が大幅に上昇するリスクがあります。

▶ 駐車場の再設計が必要になる可能性も

仮に通過交通が増加し、交差点付近での待ち時間や回転効率が悪化すれば、モール内部の車両流動も影響を受けます。特に出庫を前提とした車両の滞留がモール敷地内に発生するような場合、現在の出入口設計や駐車場配置では捌ききれない恐れも出てきます。

つまり、道路延伸は出庫の"改善"ではなく、根本的な前提条件の変更をもたらすものであり、場合によっては駐車場やアクセス動線の再設計が必要になる可能性もあるのです。


ドライバーの皆さんへお願い

🚗 右折車が前にいたら、安全な範囲でぜひ譲ってください!
🚫 交差点内への無理な侵入は厳禁です!

少しの気配りが、モール全体の流れを救います。

施設基本情報

項目 内容
施設名 イオンモール東久留米
都道府県 東京都
運営会社 イオンリテール株式会社
敷地面積(m2) 54,000
延床面積(m2) 79,000
賃貸面積(m2) 31,000
開業日 2013/4
映画館
駐車台数 1,700
駐車料金 無料
最寄駅 東久留米駅
距離(m) 2,100
最寄りIC 調布IC
ICからの距離 11,239
入口の数 3
駐車場の数 2
GoogleMap リンク

参考資料


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