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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

ららぽーとBBCC(マレーシア)― 日本のららぽーと交通アクセス比較

マレーシアのららぽーとBBCC(ブキッ・ビンタン シティ センター,LaLaport BUKIT BINTANG CITY CENTRE)を調査しました。

ここは、もともとは刑務所跡地の大規模再開発で作り変えられた一部を商業施設にした、という異色の出自を持ちます。

規模比較:ららぽーと横浜と並べると

項目 BBCC(マレーシア) ららぽーと横浜(日本)
敷地面積 約78,500 m² 102,000 m²
店舗面積 約82,600 m² 93,000 m²
駐車台数 2,400台 4,600台

規模はほぼ同等なのに、駐車台数は半分。 ここが最大の構造差です。

なぜ駐車台数が半分で成立するのか

答えは「都市型×公共交通ハブ」という設計思想です。

BBCCには以下の交通手段が直結しています。

  • LRT直結(Sri Petaling Line / Ampang Line BBCC-Hang Tuah駅)
  • モノレール直結(BBCC-Hang Tuah駅)
  • オンデマンドバン(BOLEH BOLEH Ride)
  • 空港直行シャトル(クアラルンプール国際空港・スバン空港)
  • シェアカー(GoCar)
  • 電動キックボード(Beam E-Scooters)

完全に"車以外前提"のモール設計です。

ららぽーと横浜が「郊外型・車中心」なのに対し、BBCCは「公共交通中心」。日本で言えば、駅周辺の専門店街や百貨店に近い位置づけです。

LRTとモノレールとららぽーとの位置関係

駐車場の出入口設計が本気

  • 左折イン:2か所
  • アンダーパス入口:3か所
  • 右折直接入庫:なし(中央分離帯で物理的に遮断)

これは「右折待ち渋滞を絶対に作らない」という明確な設計思想です。なお、マレーシアも日本と同じ左側通行です。

アンダーパス3か所というのはかなり本気の投資で、ららぽーと横浜が駐車台数4,600台に対してブリッジ1本なのと対照的です。

車でのアクセス

北東方面の出口をあえて作らない

施設の北東方向は混雑しやすい道路です。そのため、北東へ直接出る出口が設けられていません。別ルートを経由して帰ってもらう動線設計になっています。

日本では渋滞していても全方面に出口を設けるのが基本ですが、BBCCはその逆の発想です。

再開発エリアの道路整備の考え方

日本 BBCC(マレーシア)
整備範囲 再開発拠点に合わせて周辺道路も広く整備 再開発区域内だけ一気にワイド化・立体化
エリア外 段階的に整備が波及 一歩出ると昔ながらの道のまま

日本は再開発の波及効果を広域に広げる考え方、マレーシアは再開発区域を"飛び地"として集中的に整備する考え方です。どちらが良いというわけではなく、都市の成り立ちや予算の使い方の違いが出ています。

 まとめ

同じ「ららぽーと」ブランドでも、国が変わればこれだけ設計思想が異なります。日本のモール渋滞問題を考えるうえで、海外事例は参考になりそうです。


P.S.

 個人的には、LRTやモノレールのような都市型交通も魅力的ですが、輸送力という観点では在来鉄道の方が圧倒的に大きいケースも多いと感じています。
例えば、ららぽーと横浜の最寄りである鴨居駅(JR横浜線)の輸送力は、BBCCに接続するLRT・モノレールを上回っている可能性もあるでしょう。
これは都市構造の違いでもあります。日本の首都圏のように都市圏が広大なエリアでは「駅間を長くして遠距離から一気に運ぶ」鉄道が合理的であり、クアラルンプールのように比較的コンパクトな都市では「駅間を細かく刻む交通網」が適しているとも言えます。
またBBCCの交通手段を改めて見ると、それぞれ役割が明確に分かれています。LRTは中規模輸送、カーシェアは近距離移動、電動キックボードはラストワンマイル。「先進的だから環境に良い」と一括りに評価するのは、やや乱暴かもしれません。
交通は階層構造で成り立っており、都市の規模や需要密度に応じて最適解は変わります。「公共交通=LRTが最先端」という単純な図式ではない、という点も興味深いところです。

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