松本で暮らしていれば、一度は耳にしたことがある言葉がある。
「イオンモール渋滞」
ところが、この渋滞を裏付けるデータを探そうとすると、話は途端におかしくなる。GPS交通データや一般交通量調査を見ても、イオンモール松本周辺だけが突出して渋滞しているという数字は出てこない。むしろ、駅前や松本城周辺の国道・県道のほうが混雑度は高い。
では、「イオンモール周辺は混む」という感覚は、単なる思い込みなのだろうか?
結論から言えば、そうではない。ただし、この問題は「渋滞度」という一つの指標では捉えられない。
地図 asklib - uMap - Online map creator
最大の問題はイオンモールが無くても大渋滞
松本市の市街は城下町の中でる。 そのため細かい格子状の道路が配置され、信号機が密集する。
信号交差点が密集している
イメージがわきやすいように、松本駅東側からイオンモール方面への道路の信号間隔を計測してみました。
| 距離 | 交差点名 | 交差する道路 | 区間距離 |
|---|---|---|---|
| 0m | 松本駅前 | 松本駅 | - |
| 82m | 国府町西 | 松本市道2015号線 | 82m |
| 160m | 国府町 | 松本市道2016号線 | 78m |
| 333m | 深志二丁目 | 県道295号線(善光寺街道) | 173m |
| 447m | 飯田町 | 松本市道2034号線 | 114m |
| 529m | 深志三丁目 | 松本市道2029号線 | 82m |
| 550m | 宮村町 | 松本市道2030号線 | 21m |
| 701m | 市民芸術館西 | 国道143号線 | 151m |
| 877m | 美術館西 | 松本市道2048号線 | 176m |
| 1,090m | 勤労者福祉センター入口 | 松本市道2052・2053号線 ※イオンモール出口の一つ |
213m |
| 1,200m | 交差点名不明 | やまびこ道路 ※イオンモールへは北へ |
110m |
| 1,420m | あがたの森公園 | 県道63号線 | 220m |
なんと、平均信号間隔:約129mである! そして、この信号間隔が特にこの道だけでなく他の道も含めて同じような間隔で設置されている。

速度が出せない都市
平日日中のデータであるが、イオンモール周辺(平日なのでイオンモールの影響が少ない時間帯)においても、速度が11~15km/hである。徐行が10km/hであるから徐行より少し速度が出ている程度である。
| イオンモールから見た方位 | 道路名 | 速度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 北 | 松本和田線 | 11〜12km/h | 片側1車線 |
| 西 | 国道143号 | 13〜15km/h | 非常に狭い |
| 南 | 松本塩尻線 | 13〜15km/h | 拡幅中 |
原因は、さきの信号と信号の間の距離が短いことに加え、道路幅が極端に少ない部分が点在する。ひとつの道路を走っていてもいきなり道路が狭くなる道路もある。
主たる道路すら混んでいる
すこしイオンモールから離れて松本市を南北に結ぶ一番の道路国道19号線ですら混雑している。
- 混雑度 1.76 → 道路容量を完全に超過している状態
- 交通量 約2万台/日 → 市内屈指の交通集中路線
- 大型車 10% → 流れを阻害し渋滞を悪化させる要因
- 旅行速度 10〜17 km/h → ほぼノロノロ運転の渋滞状態
- 片側1車線+信号間隔が短い → 構造的に渋滞しやすい道路
この主要道路の混雑を避けて、市街の道路をう回路として使う逆転現象まで始まる。それをするとさらに市街地の渋滞が悪化する。
この状況で来たイオンモール
まずはこのイオンモール松本の道路アクセスについてみてみよう
駐車場
イオンモール松本の駐車台数は約2,300台。
- 晴庭P(地下・平面・立体):約1,600台
- 風庭P:約50台
- 空庭P:約100台
- あがたの森側P:約400台
イオンモール駐車場の出入り口案内 1 北側の本館(晴庭)駐車場 (地下・平面・立体):約1600台
2 風庭P(平面):約50台
3 空庭P(平面):約100台
4 あがたの森側P:約400台

なんと、これらの駐車場の出入りがすべて片道1車線の道路なのである。
番外.提携駐車場 松本駅方面に数か所提携駐車場あり。
駐車場は足りているのか
2026年1月3日(正月三が日)の駐車場満車状況は、かなり分かりやすい。
- 8:38 空庭駐車場が最初に満車
- 10:52 全駐車場が満車
- 10:52〜16:32 5時間以上、全駐車場が満車状態
- 19:44 時点でも一部駐車場は満車
この日の松本は晴天。視程20km、積雪なし。天候や路面状況に特別な要因はない。それでも、5以上時間にわたって駐車場が完全に埋まった。
特異日であるが、駐車場が不足しているという見方もできる
どれだけの交通インパクトがあるか計算
2300台の駐車場があるということは、一時間あたりザックリ三割として2300*0.3の690台の交通である。 片道1車線の信号機もほぼ無い完成度の高い道路で捌ける交通量は一時間あたりに700台であるので かなりのインパクトという事が分かるだろう。
行政の考え方
イオンモール前は国道でも県道でもない。
イオンモール前の道路は市道であり、調査の対象としても、政策上の優先順位としても後ろに回りやすい。
結果として、イオンモール周辺の交通状況は、行政の測定体系の中で可視化されにくい構造になっている。
緊急車両という絶対条件
ここで、最大の前提が出てくる。
行政と警察は、緊急車両の通行を最優先する。
一見すれば、 もっと車を流すために、信号無くす、右折レーンだけもっと作ればいいように思う
しかし、これには致命的な欠点がある。
- 緊急車両が来たとき、一般車が避けられない
- 渋滞の先頭と終端が交わり、一切動かなくなり緊急自動車も通れない
行政も根本的解決は道路拡幅と認識はしている
行政の文章を読んでいると、根本問題は道路を広げる工事であると書いてある。 しかし、道路建設はただでさえ時間がかかる上に、松本市という歴史的な土地で発掘調査で何かが出てこれば工事がとまる。また、住民の歴史がかなり成熟されているので立ち退きはかなり大変である。
なによりお金がかかるのだ。
皮肉だが、南北に結ぶ道路に長野自動車道が走っている 速度 85〜94 km/h → ほぼ制限速度通り つまり国から見ると広域道路ネットワークが既に長野自動車道が担っており、まだまだ余裕すらあるのだ いまの国道19号線拡幅を目的を、広域ネットワークや災害対策目的は既に長野自動車道が担っているで難しいのだ。
おわりに
松本市の渋滞はイオンモールが作ったのではなく、イオンモールが“見える形で露呈させた”。 真の原因は、城下町構造・信号密度・道路幅・国道19号の容量不足という“都市構造の限界”にある。
参考リンク
- イオンモール松本公式サイト:https://matsumoto-aeonmall.com/
- 駐車場リアルタイム状況:https://matsumoto-aeonmall.com/static/detail/parking
- 提携駐車場情報:https://matsumoto-aeonmall.com/static/detail/access#tieup
参考
- 社会資本総合整備計画(第1回変更)松本城を中心としたまちづくり都市再生整備計画事業 平成31年1月17日 長野県松本市
- 松本市 議会報告会報告書(前半) 平成29年11月17日(金) 19:00~19:47
- 松本駅周辺地区都市構造再編集中支援事業(長野県松本市)
- ジモトで座談会~市長と明日のまちを考えよう~ 庄内地区報告書 令和7年1月28日(火)
- 通学路安全対策実施・方針決定箇所一覧 松本市
駐車場状況ログ