道路を走っていて、やけに車線の左端を走る車や、逆にセンターラインギリギリに寄っている車を見て、「この車、なんか危なっかしいな」と感じたことはありませんか?
ネットや一部記事では、そうしたドライバーを「車両感覚がない」「初心者っぽい」と決めつけがちですが――
実はそれ、法律・道路構造・交通工学の視点から見ると、理にかなっていることも多いのです。
日本の道路交通法
キープレフトは法律です
まず大前提として、日本の道路交通法は「キープレフト」が基本です。
「車両は、道路の中央から左側を通行しなければならない」 (道路交通法第17条)
つまり、「車線の真ん中」を維持し続けるのが“正解”ではありません。 法律上はむしろ「できるだけ左寄り」が正しいのです。
右折時は「できるだけ中央に寄る」義務がある
さらに道路交通法第34条では、右折時の動きに関して次のように定められています:
「右折する際は、道路の中央にできるだけ寄って進行しなければならない」
つまり、右折意図があるときは明確に中央に寄るべきであり、 「右に寄る車=車線中央を乱す」という批判は、文脈を無視した短絡的判断と言えるでしょう。
交通環境と車の寄せ方には深い関係がある
法律だけでなく、実際の道路環境や走行状況によって「寄る」行動には多くの合理性があります。
歩道・路肩からの飛び出しリスク
幼児・自転車・ペットなどが突然飛び出してくる可能性がある
歩道が狭い/ガードレールがない道路では左に寄りすぎるのは逆に危険
→ 左端を完全に信頼して走ること自体がリスクであり、若干右寄りのポジションをとるのはむしろ慎重な対応です。
対向大型車とのすれ違い対策
対向にトラック・バスなどが来る場合、中央に寄っていると車幅ギリギリになる
特に狭い市街地や山間部では、左に寄ることで“すれ違い余裕”を確保
→ 大型車対策としてあえて左に逃げるのは極めて実用的な判断です。
バイク・原付のすり抜け対策
都市部では左側から原付がすり抜けてくることが多く、ドアミラー接触リスクあり
敢えて左に寄って、すり抜けを妨害する/起こらせない意図もある
→ これも「危ない」のではなく、安全確保のための位置調整です。
視野の確保とカーブでの可視性
カーブでは内側に寄った方が「先が見えやすく」なることが多い 渋滞時などは先の状況確認のために少し寄って覗き込むドライバーもいる
→ これは単なる「心理」ではなく、先行リスクの可視化という合理行動です。
結論:「寄っている」=「下手」ではない
車線の中で車が端に寄っているのは、単に「車両感覚が甘い」わけでも「不注意」なわけでもありません。
✅ 法律的にはキープレフト
✅ 右折時は中央寄せ義務
✅ 歩道や対向車への配慮
✅ バイク・すり抜け対策
✅ 視野確保・道路形状に対応
多くの運転者は、現場の状況に応じて適切に位置を調整しているだけなのです。
最後に:他人の運転の意図は、意外と奥が深い
見た目で「危なっかしい」「フラついてる」と感じても、 背景にはちゃんと理由があります。 単純なラベル付けよりも、道路環境・構造・心理・法制度の総合的理解が求められる時代です。