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第3章:理想と現実 - 優秀すぎる設計が生む皮肉
感情 vs 工学の対立
問題は、この精緻な設計が利用者には 「単なる不便」 としか映らないことです。
初回利用者の心境変化:
- 入口:「なんで遠回り?カーナビ間違ってる?」
- 駐車場:「地下に潜るって何?ここ本当にイオン?」
- 出口:「なんで出るのにこんなに待つの?罰ゲーム?」
設計者の心境:
- 入口:「段階的減速誘導、完璧に機能している」「アンダーパス効果で国道への影響ゼロ」
- 出口:「計画的流出制御により都市交通の安定性を確保」
この 温度差、どうにかならないものでしょうか。
「見えない恩恵」の悲劇
この設計の最大の悲劇は、その恩恵が 「見えない」 ことです。
利用者は「渋滞が起きなかった」ことに感謝しません。それは当たり前のこととして処理されます。でも実際は、この設計がなければ国道26号線は慢性的な渋滞に悩まされ、大阪南部の物流は大混乱に陥っていたはず。
設計者の立場で考えると、これほど理不尽なことはありません。完璧な仕事をしているのに誰にも感謝されない。それどころか「不便だ」と文句を言われる。
でも視点を変えてみませんか?あの「出口の信号待ち」は「社会貢献活動への参加」なのです。一人一人の小さな我慢が、大阪南部の物流を支え、都市機能を維持している。それってちょっと誇らしくありませんか?
冷静に考えると、国道26号線がスイスイ流れている時間は、駐車場から出る青信号の時間も長くできるんです(技術者涙目)。
解決のヒント:コミュニケーション設計の重要性
もうこうなったら、駐車場から出るところの看板に
ご協力ありがとうございます。 来店の際は大回りを誘導しています。さらに、出庫に時間をいただいています。これは国道26号線の渋滞防止のためです。 国道は大型車4割の物流大動脈、皆さんの協力があってこそ守られています
といった看板一つで、利用者の受け止め方は変わるはず。
そして、
現在の渋滞防止効果:○○% 車がスムーズに通行できています。 CO2排出量:○○%削減中。
みたいなリアルタイム表示があったら、待ち時間も有意義に感じるかも。(無責任発言ですが)
総括 - 優秀すぎる設計が教えてくれたこと
イオンモール堺鉄砲町の道路設計は、交通工学的には間違いなく 「傑作」 です。都市交通システム全体への配慮、精緻な需要予測、多段階制御の実装、そして何より社会責任を全面に押し出した設計思想…どれをとっても教科書レベル。
しかし、「技術的に正しい」ことと「人間が受け入れやすい」ことは、全く別次元の話なのです。
今後の都市計画では、この 「工学的最適解と人間中心設計の融合」 がますます重要になってくるでしょう。そして、イオンモール堺鉄砲町は、その難しさと重要性を教えてくれる貴重な 「生きた教材」 として、都市計画を学ぶ学生たちに語り継がれるべき存在です。
次回この道路を通る時は、「自分は精緻にデザインされた都市交通システムの一部として、社会インフラ保護に貢献している」ことを実感してみてください。
それがちょっと誇らしいと感じるか、ちょっと気持ち悪いと感じるかは…あなた次第ですが。
番外編:技術者からの切実なお願い
技術者から一言(たぶんこう思ってる):そもそも電車を使って!目の前に南海七道駅があるんだから。駅からエスカレーターとエレベーターをつけた歩道橋も作ったから、電車で来て(涙目)
このモールで車で来る方の人数は60%で計算されています。これを50%にできたら、ずいぶんと楽になるはず…たぶん…
私は正直エコってんまり興味ない(おい)ですが、車を使って渋滞でイライラするより、電車でビューーーーンと行った方が楽…かな…たぶん(笑)

施設基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | イオンモール堺鉄砲町 |
| 都道府県 | 大阪府 |
| 運営会社 | イオンリテール株式会社 |
| 敷地面積(m2) | 102,000 |
| 延床面積(m2) | 135,000 |
| 賃貸面積(m2) | 56,000 |
| 開業日 | 2016/3 |
| 映画館 | 無 |
| 駐車台数 | 2,600 |
| 駐車料金 | 有料 |
| 最寄駅 | 七道駅 |
| 距離(m) | 180 |
| 最寄りIC | 鉄砲ランプ |
| ICからの距離 | 869 |
| 入口の数 | 4 |
| 駐車場の数 | 1 |
| GoogleMap | リンク |
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