宮城県の仙台からすこし青森側にイオンモール新利府がある。大きく2つのエリアに分かれており県道8号線を挟んで北館と南館がある。この道をすこし東にいくと県道3号線があり、南側に進むと利府塩釜ICに入る。
結論からいうと、このイオンモール周辺はかなり渋滞する。特に休日は激しい渋滞であり、イオンモールの典型的な渋滞例として取り扱われる記事がでるほどである。
(先に言います、イオンモールだけに責任を負わさないで)
なお、駐車台数は5,800台(北館2,000台、南館3,800台で両駐車場とも無料)である。
では、冷静に道路の構成を見ていこう。

道路状況の実態
県道8号線の現状
まず、県道8号線の状況である。この道は仙台市と石巻市を一般道で走るときに一番選択される道である。
- 片道2車線
- 混雑度:0.94
- 昼間12時間交通量(上下計)(合計):27,992台
- 昼間旅行速度(合計):25.6km/h
利府塩釜IC方面への道路
次に、東側の利府塩釜IC方面への道は以下の通りだ。
- 片道1車線
- 混雑度:1.22
- 昼間12時間交通量(上下計)(合計):13,213台
- 昼間旅行速度(上り):30.2km/h
なお、このデータは南館開店前のものである。
南館開業と大渋滞の発生
そして、2021年3月5日南館開店、大渋滞である。
ブログなどを見ると駐車場は空いていても道路が大渋滞で、主に県道8号線を仙台市内から右折で南館に入るときに大渋滞のようである。回避方法として一度北館をぐるっと回って右折を回避すればスムーズという意見が多い。
行政の対応と調査
さて、行政としての動きをみてみる。
対策スケジュール
令和4年度
令和5年度 - 駐車場出入り口部交通量調査
令和6年度 - 交通シミュレーションを用いた渋滞対策の緩和効果把握 - 関係者協議 - 利府町中心部の渋滞対策計画策定
という手順で進めている。
施設渋滞チームの設立
行政で施設渋滞ワーキンググループ利府地区が作られた。このようなWGができるのはイオンモールのような1施設だけということはないので、周辺地域一体で渋滞問題が顕著化していると想定できる。
設立の経緯が以下のように明記されているからだ。
利府地区周辺の(主)仙台松島線では、交通混雑が著しいことに加え、令和3年3月には、東北最大規模の大規模商業施設が開業。利府地区には、宮城県総合運動公園が立地し、イベント時などには交通混雑が顕在。
調査結果の意外な発見
で、調査の結果がでてきた。この結果が予想外である。
イオンモールの北館の北側に東西道路(運動公園線)があるのだが、混雑調査ではこちらのほうが混んでいる(渋滞時間が4時間以上)。意外にも県道8号線は渋滞時間が4時間未満となっていた。
さらに突き詰めていくと、イオンモールの東側の利府塩釜IC方面と繋がる交差点を起点として、その交差点から東側、そして運動公園線まで渋滞、それがイオンモール北側の道路まで来ていた。

真のボトルネックとは
つまり、この周辺の本当のボトルネックはこのイオンモールの前ではない交差点だともいえる。このデータをもとにするとこの周辺の渋滞は宮城県総合運動公園がメインで、イオンモールが従属のようにも見える。
そもそも、県道8号線の通行量が多い、これは覆せない。そこにイオンモールは仙台市方面から県道8号線を進んだときの信号制御で右折時間を取れないのが、右折による渋滞として目に見えて分かりやすいということであろう。
現在の対策状況
イオンモール側の対応
イオンモールとしては渋滞時にこの県道8号線を使わずに南側の新利府駅経由の道でのアクセスに誘導している。
行政側の対応
行政としては、イオンモールから仙台市に抜ける道を一部事業中である(町道新中堀新川崎線)。
なお、行政として渋滞対策の実施に向けた検討(公安協議など)は今年の令和7年度から始まる。そこからモニタリングや検討に入るのでまだまだ時間がかかるであろう。
渋滞の真の原因と実践的な解決策
調査を進めてわかったことは、駐車場が満車ではなく、右折渋滞だけが問題だということだ。ということは、その交差点で右折をしなければ渋滞は防げるのである。
実践的な迂回ルート提案
県道8号線を仙台方面からイオンモール南館に行く場合の賢いルートを提案したい。

①現状の右折渋滞交差点(県道8号線のイオンモール西側の交差点)
- 渋滞無:そのまま右折(渋滞がないならそのまま入庫がスマート)
- 渋滞有:そのまま直進
②次の信号交差点(県道8号線のイオンモール東側の交差点)
- 渋滞無:そのまま右折
- 渋滞有:左折
- そして左手にイオンモール北館が見えるので北館東出入り口の2つめ(信号が無いほう)から一度駐車場に入る
- 左折して信号のある出口から南館方面へ右折でUターン
この方法なら、渋滞している右折レーンを完全に回避できる。
私の中で没にした案
北館と南館を結ぶ車も走れるブリッジ
道路設計的にあとから思うと、なぜ北館と南館を結ぶ車も走れるブリッジを作って左折イン・左折アウトにさせなかったのかとは思うが、おそらく別の店舗として申請したのであろう。(でも歩道用ブリッジはつけているが、、、)
北館に停めてもらい南館に歩いていってもらう
ソフト的に北館に停めてもらう誘導をすればいいのでは、、、と、、、
しかし、この簡単そうな解決策が実現しない理由を考えてみると、実は複雑な事情がある。
1. 🚗 北側の駐車場も混雑という現実
実際のところ、北側の駐車場も休日は相当混雑しており、現状で南館利用者を北館に誘導するのは物理的に無理があるという事情もある。
2. 🏬 商業戦略的な理由:南館が「主戦場」だから
南館には「イオンスタイル」「映画館」「専門店街」など高単価・長滞在型の店舗が集中している。イオンとしては「南館で買って・食べて・過ごして」もらうことが収益源となっている。
北館に駐車させて歩かせることで、その購買動線から逸脱するリスクを避けたいという思惑がある。つまり、多少渋滞してでも南館に直行してもらいたいのが本音かもしれない。
3. 💰 客層・店舗属性の違い:北館は「生活者」、南館は「エンタメ層」
北館の駐車場は地元のリピーターのために空けておきたいという考え方もあるかもしれない。
4. 🚧 構造・導線的な問題:物理的にやや分断されている
北館と南館の間には県道8号線があり、車のブリッジはない。歩道橋はあるが、
- 南館2階から「連絡ブリッジ」に入る
- ブリッジの終点は北館の1階
- しかもエスカレーター付きでフロアを跨いで降りる仕様
「北館から歩かせる=体験価値の低下」となりかねない。イオンとしては顧客満足度やUX低下を懸念している可能性がある。
最新の状況と今後の展望
現在も、イオンモール側は「特に、午後4時頃から午後6時頃にかけては出庫渋滞が起きやすい時間帯」として、出庫に30分から1時間かかる場合があることを告知している。つまり、渋滞問題は根本的には解決していない。
行政の対策も実際の改善まではまだ数年を要すると予想される。
まとめ:この事例から学べること
なんだか煮えない記事になったが、ハードウェア的・ソフト的(侵入ルートの変更)、と行政のマクロの対応が見れて興味深いケースである。
この事例から学べることは以下の通りだ。
1. 見た目の渋滞と実際のボトルネックは異なる場合がある
県道8号線の右折渋滞は目立つが、真の原因は利府塩釜IC方面の交差点にあった
2. 既存インフラの限界を見極めることの重要性
混雑度0.94の県道8号線は既に限界に近い状況だった
3. 複合的な要因による渋滞の発生
宮城県総合運動公園という既存要因にイオンモール南館が加わった結果
4. 利用者の行動変容による改善の可能性
右折渋滞回避ルートや北館経由ルートなど、利用者側の工夫で大幅な時短が可能
5. 大型開発時の交通アセスメントの重要性
事前の十分な検討と対策が必要だが、現実には後手に回りがち
6. ステークホルダー間の利害調整の複雑さ
利用者・事業者・行政それぞれに異なる思惑があり、最適解の実現は困難
今後の対策実施を見守りつつ、利用者としては右折渋滞を回避する迂回ルートの活用や、時間をずらす、別ルートを使う、公共交通の活用など、賢い施設利用を心がけるのが現実的な対応だろう。
そして何より、大型商業施設の立地計画時には、このような複合的な交通影響を事前に十分検討し、開業と同時に対策を実施できる仕組みづくりが必要だと感じる。イオンモール新利府の事例は、日本全国の同様の開発において貴重な教訓となるはずだ。
参考文献:Business Journal「またイオンモール開業で大渋滞、なぜ繰り返す?路線バス遅延、地域住民に迷惑も」2022.10.15 企業
施設基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | イオンモール新利府 |
| 都道府県 | 宮城県 |
| 運営会社 | イオンリテール株式会社 |
| 敷地面積(m2) | 216,000 |
| 延床面積(m2) | 167,000 |
| 賃貸面積(m2) | 102,000 |
| 開業日 | 2000/4/25 |
| 映画館 | 有 |
| 駐車台数 | 5,800 |
| 駐車料金 | 無料 |
| 駐輪台数 | 900 |
| 最寄駅 | 新利府駅 |
| 距離(m) | 550 |
| 最寄りIC | 利府塩釜IC |
| ICからの距離 | 1,840 |
| 入口の数 | 11 |
| 駐車場の数 | 3 |
| GoogleMap | リンク |
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