横浜に巨大テーマパーク「KAMISEYA PARK」計画——でも、どうやって1,500万人を運ぶつもりなの?
横浜市の上瀬谷で、とんでもない計画が動き始めている。
2027年にGREEN×EXPO2027が開催される予定の上瀬谷エリア。
その近くに、ユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)と同規模の巨大テーマパークを建設する計画が浮上している。
その名も「KAMISEYA PARK」(仮)
1.規模
| 施設 |
駐車台数 |
面積 |
来場者数 |
| KAMISEYA PARK(計画) |
4,500台 |
約50ha |
1,500万人(予測) |
| USJ |
2,800台 |
約54ha |
1,600万人 |
| TDL |
8,000台 |
約50ha |
2,755万人(TDL・TDS合計) |
| TDS |
4,500台 |
約60ha |
同上 |
テーマパークだけで年間1,500万人の来場を見込んでいるというから驚く。ちなみにUSJが約1,600万人なので、そのクラスだ。
ワクワクする話ではある。でも私はどうしても気になってしまう。
その1,500万人、どうやって運ぶのだろうか。
その答えは「バス」と「自家用車」という横浜市の計画がある。
おおよそのバス
2.前提整理
①KAMISEYA PARK→最寄りの各駅まで約2~3キロ、徒歩30~45分。歩くには厳しい距離である。
②住宅街に囲まれた立地のテーマパーク → 騒音や振動への配慮が求められる
③東名高速に近い → 現在でも東名高速は渋滞頻発道路
④テーマパークだけではない。ホテル・大規模小売店・大規模公園(キャンプ施設やドッグラン等)・災害物資保管施設・物流施設・農業振興地区も敷地に入る。
同じ規模の日本のテーマパークである
TDRやUSJは、ほぼ駅直結の立地だ。
後述するが、このテーマパークは駅から2~3キロ離れている。
2.1.先立つGREEN×EXPO2027
そして話を複雑にしているのが、
GREEN×EXPO2027の存在だ
| 名称 |
期間 |
集客 |
| GREEN×EXPO2027 |
192日 |
7万人/日(期間合計1500万人) |
| KAMISEYA PARK |
長期(50年以上) |
4万人/日(年間1500万人) |
EXPOのような半年限定イベントと、長期間運営されるテーマパークでは前提が根本的に異なる。
EXPOに合わせた交通対策は
半年の集客であり、鉄道などの大量輸送機関に投資するより、
バスを期間限定で頻繫利用したほうがコストメリットが大きく出る。
また、終わりがあるので住民も我慢しやすい。
投資回収期間が大きく異なるため、交通インフラへの投資判断も大きく変わる典型例と言える。
3.輸送機関
3.1.鉄道
まずは、他施設と鉄道状況を比較する。
【 KAMISEYA PARK 】
・瀬谷駅(3km)
・新町田グランベリーパーク(2.5km)
・鶴間駅(3km)
【 USJ 】
・ユニバーサルシティ駅(0.6km)
【 TDL 】
・舞浜駅(0.644km)
・ディズニーランドステーション(0.2km)
【 TDS 】
・舞浜駅(1.4km)
・ディズニーシーステーション(0.2km)
KAMISEYA PARK近隣の駅
| 最寄り駅 |
距離 |
路線名 |
編成数 |
編成両数 |
| 瀬谷駅 |
3km |
相鉄本線 |
9編成 |
8~10両 |
| 新町田グランベリーパーク駅 |
2.5km |
東急田園都市線 |
12編成 |
6両 |
| 鶴間駅 |
3km |
小田急江ノ島線 |
6編成 |
6~10両 |
3.2.バス
| 行先 |
次世代化(自動運転・連接) |
バス専用道 |
| 瀬谷駅行き |
無人運転 × 連接 |
有 |
| 北方面(新町田グランベリーパーク行き) |
無人運転 × 連接 |
無 |
| 空港行き |
不明 |
無 |
| その他の一部駅行き |
不明 |
無 |
特に、瀬谷駅行きがメインになるとのことで、
連接バス1台で約120人乗れるとしよう。60秒に1台走らせたとして、1時間に運べる人数は——
120人 × 60本 = 7,200人/時
横浜市の資料では一時間あたり9,000人輸送可能としているので、もっと間隔を短くするのであろう。
ちなみにUSJへのアクセスになる桜島線は休日朝の入場時間は一時間に8本の電車が走るので
8編成×1,200人=9,600人運んでいる。
一見同程度の輸送量に見えるが、平日朝は一時間に9編成走っているので、これは需要と供給のバランスがとれているため編成を減らしている。
他方面へのバスがあるという意見もあるが、USJにもバスが多数運行されているので誤差の範囲であろう。
3.2.1.「メインの交通をバスで輸送、40年前にやらかしてる」
実はこのバス輸送問題、日本はすでに一度経験している。
1983年にTDLが開業したとき、京葉線はまだ開通していなかった。当時の輸送手段は7キロ離れた地下鉄東西線の浦安駅からバス輸送だった。
結果は大きな混乱を招き、バスに乗れない来場者が大量発生した。
輸送はほぼ破綻状態だったという。
それを救ったのが、1988年に開通した京葉線だ。鉄道という大量輸送機関があってはじめて、TDLは安定的に運営できるようになった。
KAMISEYA PARKの、バスが一時間に9,000人を問題なく運べるかがカギになる。
TDLの混乱記事はこちら、
第3話 ディズニー開業で起きた交通の「誤算」と特効薬 - asklib
3.3.自家用車
4,500台の大規模駐車場を整備し、自家用車での来園も主要アクセス手段としている。
駐車場に加え
東名高速の横浜町田ICの少し南に新ICを作り、出入口をテーマパーク敷地内に設置するとされている。
一見ICを横浜町田と分散化して混雑が起きない計画に見える。
しかし、別問題がある。
東名高速の横浜町田IC周辺はすでに慢性渋滞区間だ。そこに「4,500台の来場車が加わる」。高速道路の1車線あたりの処理能力は約2,000台/時とされているので、4,500台を処理するだけでも、理論上は1車線を約2〜3時間占有する計算になる。
しかも入場・退場は時間が集中する。退場時の一斉流出が東名本線に波及したら、その影響は神奈川県どころか「東京~名古屋の国家軸」に広がりかねない。
周辺道路も今は余裕があるが、駐車場の車だけで4,500台が加わると、道路の処理容量はほぼ100%に達する。バスやタクシーの増加分を考えると、それを超える。地域の道路拡幅工事も計画されているようだが、どこまでさばけるのか正直疑問だ。
3.3.1.東名高速は既に限界の交通容量を捌いている
ここで国土交通省の交通量調査データを見てみよう。現状がすでに相当ヤバい。
| 場所 |
高速 |
24時間交通量 |
混雑度 |
| KAMISEYA PARK予定地 |
東名高速道路 |
140,425台 |
1.04 |
| (参考)USJ周辺 |
阪神高速 淀川左岸線 |
9,379台 |
0.14 |
| (参考)TDR周辺 |
首都高速湾岸線 |
104,162台 |
0.83 |
(令和3年度 一般交通量調査結果(可視化ツール)より)
混雑度1.0は「道路の設計容量」を意味する。
1.0を超えると、交通量が少し増えただけでも渋滞が急激に悪化する。
KAMISEYA予定地の東名高速は、すでに容量を超えている。
そこにテーマパークの車が加わる。
すでにキャパオーバーの道路に1割増しが加わると何が起きるか。新ICに入りきれない車が一般道に溢れ、それが詰まれば東名本線が詰まり、首都高や他のICにまで渋滞が連鎖していく。テーマパーク周辺だけの問題では済まない話だ。
しかも、日本を代表する東名高速に一気に車が増える。ディズニー渋滞と揶揄されるが、それより酷くなる可能性が高い。
4.じゃあどうすればいいのか、私なりに考えてみた
非難があるのは承知の上で、思い切って書く。
4.1.交通アクセスをコントロールする
4.1.1. 完全予約制
沖縄のジャングリアは完全予約制を採用した。同じように、駐車場もバスも含めたアクセス手段をすべて予約制にして人流をコントロールする方法だ。空きがあっても入れない、バスに乗れても予約がなければ門前払い——それくらいの「勇気ある運用」が必要かもしれない。
4.1.2. マイカー来場を原則禁止にする
愛・地球博や関西万博ではマイカーでの直接来場を禁止し、パーク&ライドを採用した。これを恒久的な運営方針にする手もある。空いた駐車場スペースを各地からの高速バス用ターミナルに転用すれば、遠方からの来場者を効率よく捌ける。
4.2.供給側(テーマパーク)を小さくする
横浜市の論理には大きな矛盾がある。『需要が不透明だから鉄道(AGT)は作らない』と言いながら、『年間1,500万人(USJ級)集める』という巨大な旗を掲げている。
『人が来ないかもしれないからインフラはケチる、でも人は世界級に集める』。
このアクセルとブレーキを同時に踏むような計画に、無理があるのは明白だ。
なら発想を逆にして、テーマパークの規模を500万人級まで落とし、交通インフラの整備状況に合わせて段階的に拡張していく方が現実的ではないか。身の丈に合った開業から始める勇気も必要だ。
4.3.ケチらずに鉄道を作る
1,500万人規模に拘るなら、交通インフラも相応のものを用意するしかない。横浜市は連接バス専用道を「南北の新交通軸」と位置づけているようだが、テーマパーク輸送だけで破綻が見える路線を「軸」と呼ぶのは無理がある。
最初は瀬谷駅とテーマパークを結ぶ短距離でいい。そこから北方面・南方面へ延伸し、相鉄線だけでなく複数路線と接続する交通軸に育てていく。そういうビジョンがあってこそ、1,500万人という数字に説得力が生まれる。
4.4.逆転の発想:2キロを歩かせる設計にする
極論ではあるが、駅からテーマパークまで約2~3kmを「歩くことを前提にした街づくり」とする発想も考えられる。
駅からテーマパークへの歩道を整備(バリアフリー、看板を大量に設置、屋根をつける、給水場を作るなど)
これを瀬谷駅方向と南町田グランベリーパーク方向の2方向に整備する。
5.まとめ:「自動運転バスで大量輸送できるか」の壮大な実験だ
TDLは40年前にバス輸送で失敗し、京葉線で救われた——そんな歴史がある。
KAMISEYA PARKは、40年の時を経て同じバスでも「最先端技術の自動運転・連接バスで1,500万人を運ぶ」という壮大な社会実験になるのかもしれない。
横浜市としては意図的に次世代交通の広報にしたい思惑もあるだろう。
9.参考文献
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