奈良県広陵町と香芝市にまたがるショッピングセンター エコール・マミ。
駐車台数は約1,200台と中規模。 イオンモールのような「週末は必ず詰まる」タイプの施設ではありません。
それにもかかわらず、この施設の周辺には 交通安全上の重要ポイントが驚くほど凝縮されています。
今回は 「渋滞がない=問題がない」わけではない という好例として、エコール・マミ周辺の交通設計を見ていきます。
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前提:施設概要
エコール・マミ
規模としては、あくまで「中規模ショッピングセンター」です。

問題①:直進すると生活道路に流れてしまう道路
北館と南館の間を通る道路。 ここは初見だと、明らかにメインアクセス道路に見えます。
ところが―― この道を西にそのまま直進すると、生活道路へ入り込んでしまう構造になっています。

本来であれば 「生活道路は避けよう」 となるはずですが、現実はそう単純ではありません。
生活道路を避けようとすると、異様に遠回り
- 生活道路に入る直前で左折
- 中和幹線(片道2車線の東西幹線道路)と交わる道で右折
- 生活道路から出てくる別の道路で左折
- ようやく国道165号線へ
――正直、かなり煩雑です。

この「面倒くささ」こそが、生活道路に流入してしまう最大の原因です。
中和幹線の悪い記憶
さらに拍車をかけるのが、中和幹線のイメージ。
かつては慢性的な渋滞路線でした。 現在は改良が進み、流れはかなり改善されています。

それでも、
「中和幹線=混む道」
という印象が、いまだにドライバーの頭に残っています。
結果として
- 遠回り
- 混みそう という正規ルートを避け、
「まっすぐ行ける」生活道路を選んでしまうのです。
[写真挿入ポイント②:ゾーン30の大きな看板とカラー舗装]

[写真挿入ポイント③:「中和幹線の流れがよくなっています。中和幹線を走りましょう」の看板]

対策:物理的に塞がない、心理的に避けさせる
この問題に対して取られている対策は、
- ゾーン30の設定
- カラー舗装による視覚的注意喚起
- 「中和幹線を走りましょう」というかなり直接的な看板
物理的に通れなくするのではなく、 「ここは行かないほうがいい」と心理的に誘導する方法です。
問題②:北館駐車場「入ってすぐ停めたい」問題
[写真挿入ポイント④:北館駐車場の入口、1階駐車エリア]
北館の駐車場は立体駐車場ですが、構造にクセがあります。
- 入口から入る
- まず1階の店舗入口前駐車エリアを通過
- そこから上階へスロープ
という流れ。
人は必ずこう考える
「一番便利な1階に停めたい」
結果、 入口付近で空き待ちが発生し、流れが滞ります。

対策:構造を変えず、運用で解決
ここで取られている対策はシンプルです。
- 1階をバリアフリー車専用に限定
- 常に警備員を配置し、一般車はスロープへ誘導
ハードはそのまま、 人の動きで流れを作る方式です。
問題③:歩車分離型交差点への変更
北館と南館の間の交差点。 当初は、一般的な信号制御でした。
しかしこの周辺には学校もあり、 重大な事故が発生してしまいます。
対策:歩車分離型信号
現在は歩車分離型に変更され、
- 歩行者は歩行者だけ
- 車両は車両だけ
動線を完全に分離。 安全性を最優先した判断です。

その他の細かな改善
- 南館駐車場:出入口を分離
- 南側交差点:一時停止 → 信号機設置

南側交差点、信号が付きました
どれも一つひとつは小さな変更ですが、 積み重ねで安全性を高めています。
総括:渋滞ではなく「心理」が生んだ危険
この事例は、 「渋滞がひどい商業施設」の話ではありません。
むしろ、
- まっすぐ進みたい → 生活道路へ侵入
- 近くに停めたい → 駐車場入口で滞留
- 歩行者を意識しない → 事故発生
人間の心理が、そのまま危険につながっていたケースです。
抜本対策が難しい現実
理想を言えば、
- アクセス導線の全面再設計
- 駐車場構造の変更
- 北館・南館の統合
などが考えられますが、 既存施設でそれを行うのは非現実的です。
2自治体にまたがる難しさ
しかもこの施設は、 広陵町と香芝市にまたがるという条件付き。
調整の難しさは想像に難くありません。
だからこそ、
- 看板
- 誘導員
- 信号制御
というソフト面での改善を積み重ねて対応してきた点が、非常に示唆的です。
最後に
利用者側から見ると、
「ちょっと不便になったな」
と感じる場面もあるかもしれません。
しかしその裏側では、 事故を起こさないための試行錯誤が続いています。
「渋滞がない=安全」ではない。 エコール・マミは、そのことを静かに教えてくれる事例です。

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