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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

ららぽーと海老名の渋滞と対策状況について

今回は、神奈川県海老名市に2015年に開業した「ららぽーと海老名」の道路アクセス問題について詳しく分析してみたいと思います。JR海老名駅に直結する大型ショッピングモールとして注目を集めた一方で、周辺道路への交通影響は深刻な問題となっています。


地図はこちら▶(外部リンク)


ららぽーと海老名の概要

ららぽーと海老名は、JR海老名駅に直結する大型ショッピングモールです。小田急海老名駅相鉄線海老名駅とも、このららぽーとの開業とほぼ同時期に自由通路が建築され、電車でのアクセスは非常に良好な立地となっています。

駅直結という利便性の高さから多くの来店客を集める一方で、自動車でのアクセスに関しては深刻な問題を抱えることになりました。

なお、駐車台数は1800台です。

車線MAP

交通渋滞の実態

統計データで見る影響

ららぽーと海老名の開業前後で、周辺道路の交通状況は明確に悪化しています。

周辺通行速度の変化

  • 建設前:26.6km/h
  • 建築後:25.1km/h

渋滞損失時間の変化

  • 建設前:14,735人・時間/日
  • 建築後:18,125人・時間/日

数値で見ると、渋滞損失時間は約23%も増加しており、地域全体の交通効率が大幅に低下していることが分かります。

住民の声

統計だけでなく、実際に生活する住民からも厳しい声が上がっています。

  • ららぽーとの駐車場渋滞にも大変困惑している」
  • 「週末のららぽーと渋滞をどうにかしてほしい。特に小田急の高架のところ(他に逃げ道がない)」
  • ららぽーとなどで休みの日は周辺道路が混むため自転車での移動が増えた」

これらの声からは、単なる一時的な混雑ではなく、日常生活に支障をきたすレベルの慢性的な渋滞が発生していることが伺えます。

渋滞発生の構造的要因

では、なぜこれほどまでに渋滞が深刻化しているのでしょうか。その要因を詳しく見てみましょう。

北側アクセスの問題

北側には国道246号線からのメインアクセスとなる道路があります。国道246号線から分岐して県道町田厚木線に入るルートですが、この道路構造に大きな問題があります。

県道町田厚木線の道路状況

  • 片道1車線
  • 右折レーンが基本的に無し
  • 混雑度:1.36(道路容量を大幅に超過)
  • 昼間旅行速度:17.6km/h

参考として、接続する国道246号線の状況は以下の通りです。

国道241号線の道路状況

  • 混雑度:0.76
  • 昼間旅行速度:47.1km/h
  • 朝夕旅行速度:18.4km/h(通勤時間帯に大渋滞)

もともと混雑していた道路に、ららぽーとへの交通が上乗せされた結果、処理能力を大幅に超える交通量となってしまいました。

南側アクセスの問題

南側のメインアクセスは、片道1車線で踏切をまたぐ道路となっています。踏切による交通遮断がもともと渋滞要因となっていた場所に、さらにららぽーとへの交通が加わることで、渋滞が一層深刻化しました。

踏切による交通遮断は、単純な交通量の問題だけでなく、電車の運行間隔に左右される不確定要素も含んでいるため、渋滞の予測や対策がより困難になっています。

行政による対策

ハード面での対策

ハード対策

行政側も手をこまねいているわけではなく、段階的にハード面での対策を実施しています。

1. 歩行者動線の確保 ほぼ開店日に合わせて、JRと小田急相鉄線への自由通路を建設しました。これにより歩行者の安全で快適な動線が確保され、駅とららぽーとの連携が強化されました。

2. 西側道路の拡幅 店舗から西側への道路拡幅工事を実施し、既に完成しています。

3. 南側アンダーパスの整備 南側へのアクセスで踏切とは異なるルートとして、小田急線の線路をアンダーパスで通り図書館横まで伸ばす新しいアクセス道路を整備しました。この工事は2025年に完了しています。

4. 踏切道路の高架化計画 既存の踏切がある道路について、現状の片道1車線から片道2車線にして高架化する計画があります。これが実現すれば、踏切による交通遮断問題の根本的解決が期待されます。

中止となった対策

一方で、北側の国道246号線からのアクセス道路拡幅(片道2車線化)については中止となりました。これは行政コストと効果のバランスを考慮した判断と考えられます。

ソフト面での対策

ハード整備だけでなく、ソフト面での対策も実施されています。

ららぽーと側は、北側からのアクセスについて国道246号線ではなく、店舗東側から北に抜ける別のルートを案内しています。ただし、この代替ルートは国道246号線にはアクセスできない道路のため、根本的な解決には至っていません。

今後の展望と課題

2025年完成アンダーパスの効果

2025年に完成した南側の新しいアンダーパスの効果がまだ十分に表れていないため、どの程度の改善効果があるかが注目されます。踏切による交通遮断を回避できるルートが整備されたことで、南側からのアクセス改善が期待されています。

残された課題

しかし、北側の県道町田厚木線の構造的問題(片道1車線、右折レーン無し)は依然として残っており、抜本的な改善には至っていません。アクセス道路拡幅が中止となったため、この問題の解決は長期的な課題となりそうです。

高架化工事への期待

踏切道路の高架化計画が実現すれば、南側アクセスの問題は大幅に改善される可能性があります。しかし、工事期間中の交通規制や、完成までの長期間を要することなど、新たな課題も予想されます。

まとめ

ららぽーと海老名の事例は、大型商業施設の開発が周辺交通に与える影響と、その対策の複雑さを如実に示しています。

開業により約23%の渋滞損失時間増加という深刻な交通影響が発生した一方で、行政は歩行者動線確保、道路拡幅、アンダーパス整備などの段階的な対策を実施してきました。特に北側アクセス道路拡幅の中止判断は、限られた行政予算の中でコストと効果のバランスを取る難しさを象徴的に表しています。

この事例から学べることは、大型開発における交通インパクト評価の重要性と、開業前の十分な交通対策検討の必要性です。また、ハード整備だけでなく、ソフト対策との組み合わせによる総合的なアプローチの重要性も浮き彫りになります。

今後、2025年完成のアンダーパスや計画中の高架化工事の効果検証を通じて、この事例はさらに貴重な参考資料となることでしょう。他の類似開発案件においても、ららぽーと海老名の経験を活かした、より効果的な交通対策の立案が期待されます。

都市開発と交通インフラの調和は、今後も多くの地域で直面する課題です。ららぽーと海老名の事例が、その解決に向けた一つの教訓となることを願います。

施設基本情報

項目 内容
施設名 ららぽーと海老名
都道府県 神奈川県
運営会社 三井不動産グループ
敷地面積(m2) 33,000
延床面積(m2) 121,000
賃貸面積(m2) 54,000
専門店数 260
開業日 2015/10
映画館
駐車台数 1,800
駐車料金 有料
最寄駅 海老名駅
距離(m) 300
最寄り高速 圏央道
最寄りIC 海老名IC
ICからの距離 3,172
入口の数 3
駐車場の数 1
GoogleMap リンク

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