はじめに
地方の郊外型ショッピングセンターでは、しばしば予期しない交通問題が発生する。今回は、石川県のイオン加賀の里店を例に、一見不合理に見えるドライバーの行動について考察してみたい。
イオン加賀の里店の基本情報
イオン加賀の里店は、駐車台数1,236台、駐車料金無料の典型的な中規模郊外型ショッピングセンターである。立地的には、南側を東西に走る国道に面し、その国道から加賀温泉駅方面への道路との交差点を北へ進んだ西側に店舗と駐車場が位置している。
この立地配置だけを見れば、交通渋滞も発生しにくい、よくある店舗の典型例と言えるだろう。

予想外の問題:農道への車両流入
しかし、この店舗では予想外の問題が発生している。店舗北側に接する道路から北側および北西側に延びる農道を、イオン利用者の車両が通行してしまうのだ。
駅と国道を結ぶメインルートは、信号機も整備され、道幅も広く走りやすい設計になっている。にもかかわらず、多くのドライバーが農道を選択するという現象が起きているのである。
なぜ農道を選ぶのか:心理的要因の分析
この現象の背景には、完全に心理的な判断があると考えられる。
農道の特徴は以下の通りだ:
- 道幅は狭い
- 信号機がない
- 標識類が極めて少ない
- 高い自由度
つまり、対向車が来ず、速度を維持し続けることができれば、確かにメインルートより早い「裏道」になる可能性がある。しかし、これはまさにギャンブルそのものである。
交通制御 vs ドライバーの自由度
この問題の本質は、「交通の心理的制御」と「自由度を求めるドライバー心理」の対立にあると考える。
メインルートである駅と国道を結ぶ道路は、標識や信号、複数車線により交通が完全にコントロールされている。これは安全性と効率性を高める一方で、運転手にとっては自由度が低いと感じられる環境でもある。
対照的に農道は、制約が少なく自由度が高い。この「自由に運転できる感覚」が、客観的には非効率であっても農道を選択させる心理的要因となっているのではないだろうか。
現在の対策
現在、この問題に対してはクッションドラム(黄色い円筒形の物体)と看板による侵入抑制策が実施されている。
まとめ
イオン加賀の里店の事例は、交通計画において技術的・物理的な側面だけでなく、ドライバーの心理的要因を考慮することの重要性を示している。完璧に整備された道路があっても、人々は必ずしも合理的な選択をするとは限らない。
この現象は、大規模商業施設周辺の交通問題を考える上で重要な示唆を与えてくれる。今後の交通計画では、単なる物理的な道路整備だけでなく、ドライバー心理を踏まえた総合的なアプローチが求められるだろう。
施設基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | イオン加賀の里 |
| 都道府県 | 石川県 |
| 運営会社 | イオンリテール株式会社 |
| 賃貸面積(m2) | 16,761 |
| 開業日 | 1996/7/10 |
| 映画館 | 無 |
| 駐車台数 | 1,236 |
| 駐車料金 | 無料 |
| 最寄駅 | 加賀温泉駅 |
| 距離(m) | 1,700 |
| 最寄りIC | 加賀IC |
| ICからの距離 | 6,100 |
| 入口の数 | 4 |
| 駐車場の数 | 1 |
| GoogleMap | リンク |
参考文献
- 国土交通省「大規模商業施設の周辺で、交通安全上支障をきたしている例」
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