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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

ららぽーと堺はなぜ混雑するのか?現地調査で見えた交通問題の実態

ららぽーと堺」。関西最大級のショッピングモールとして注目を集める一方で、深刻な交通問題を抱えています。実際に現地調査を行い、なぜこれほど混雑するのか、その原因を徹底分析してみました。

umap.openstreetmap.fr

立地条件が生む構造的問題

ららぽーと堺は堺市美原区の交通要衝に位置しています。国道309号線(片道2車線)沿いという好立地の一方で、すぐ北側には府道泉大津美原線(片道2車線の基本高架道路)が走る、非常に交通が密集する地域です。

国道309号線と府道の交差点

基本データ

  • 駐車場台数:3,050台
  • 敷地面積:約74,300㎡
  • 年間来場者数:1,300万人想定
  • 1日あたり来店客数:約36,000人
  • 自動車で来る人の割合:80%(計画値)

道路MAP
北側の立体駐車場と本館は離れているように見えるが、実際はデッキで車でも行き来できる

現地調査で発見した「公式vs現実」のギャップ

1. 右折禁止なのに右折する車が続出

現地調査で最も驚いたのは、基本的に左折入庫・左折出庫の設計にも関わらず、約5台に1台が右折出庫していることでした。

これは国道309号線の混雑を避けて、府道190号線経由で裏道に向かうためと推測されます。しかし、右折出庫に時間がかかり、全体の交通流をさらに悪化させている可能性があります。

この右折禁止の出口で右折していきます

2. 生活道路への看板と公式アクセス図の矛盾

店舗北側には「生活道路につき侵入ご遠慮願います(堺市役所・自治体名)」という看板があります。ところが、公式のアクセス図にはこの道路がしっかりと記載されているのです。

生活道路との看板

公式ウェブサイトでは「生活道路への侵入は近隣に迷惑がかかる」と注意喚起しているものの、利用を完全に禁止したいなら、そもそもアクセス図から削除すべきではないでしょうか。

3. バス停アクセスの不便さが車利用を促進

他の大型店舗でよく見る「公共交通機関をご利用ください」の案内が見当たりません。これは明らかに車でのアクセスを前提とした設計です。

バス停へのアクセス

最寄りの「美原区役所前」バス停へのアクセスが特に問題です。直線距離では約100mなのに、実際は

  1. 店舗から出て押しボタン式の横断歩道を渡る
  2. 左側に迂回して駐車場入庫道路と交差
  3. 点線の横断歩道らしきものでららぽーとと区役所別館の間の道路を横断
  4. ぐるっと回ってバス停に到着

しかし現実では、多くの人が押しボタンを押さずに赤信号で横断し、区役所の駐輪場を抜け道として利用しています。心理的に最短距離を選ぶのは当然の行動でしょう。

地域住民への影響

歩道橋撤去による歩行者の危険性

ららぽーと建設に伴い、国道309号線を横断する歩道橋が撤去されました。地元住民からは再建の要望が出ていますが、行政は「横断歩道を使用するように」という方針です。

休日の昼間、ららぽーととビバホーム美原間の横断歩道は大量の歩行者で混雑し、左折車両が一時停止することで渋滞が発生しています。

生活道路への影響

美原区北余部の住民からは深刻な声が上がっています:

ららぽーとなどが出来、抜け道として使う方が増え、危なくなりました。事故もあり。元々、対向するのがかなりきつい狭い道でした。通学路でもあり、グリーンベルトあるにもかかわらずグリーンベルト無視、スピード無視で飛ばしてくるのでかなり怖いです。子どもも跳ねられました。」

数字で見る交通量の変化

開店前の交通量データを見ると混雑度が分かります。

府道泉大津美原線(店舗北側)

  • 混雑度:0.95 ~ 1.11
  • 昼間旅行速度:7.8km/h ~ 26.2km/h

国道309号線(店舗西側)

  • 混雑度:0.95 ~ 0.96
  • 昼間旅行速度:20.1km/h ~ 22.0km/h

利用者・運営者への提言

利用者として

国道309号線の混雑は避けられません。特に北側方面への移動時は、府道190号線経由での迂回ルートを検討することをお勧めします。公式アクセス図にも記載されているため、現時点では問題ないでしょう。

運営者への提言

1. 交通アクセス図の改訂

  • 生活道路をアクセスMAPから削除、または×印で明確に通行禁止を表示
  • アクセス案内写真の車両・通行人が少ないタイミングで撮影しモザイク処理を適切に実施

2. バス停アクセスルートの見直し

  • 押しボタン式横断歩道の廃止(歩行者優先の原則に基づく)
  • 区役所と協議し、駐輪場の抜け道利用を防ぐ対策
  • 適切な横断歩道の設置

まとめ

ららぽーと堺の交通問題は、単なる「人気による混雑」ではなく、立地条件と設計上の構造的問題に起因しています。年間1,300万人が訪れる施設として、周辺住民との共存を図りながら、より良い交通環境を実現するためには、行政・運営者・利用者が一体となった取り組みが必要でしょう。

今後、松原にイオンモール、門真のららぽーと門真との競合も激化する中、交通アクセスの改善は施設の持続的な発展にとって重要な課題となっています。

参考文献

(仮称)堺市美原区山東計画に関わる配慮計画書についての検討結果(案)平成29年 堺市環境影響評価審査会

堺市 美原区直行日へのご投稿に対する回答 令和5年度より

令和3年度 一般交通量調査結果(可視化ツール)

施設基本情報

項目 内容
施設名 ららぽーと
都道府県 大阪府
運営会社 三井不動産グループ
敷地面積(m2) 74,300
延床面積(m2) 143,600
賃貸面積(m2) 56,200
専門店数 212
開業日 2022/11
映画館
駐車台数 3,050
駐車料金 無料
駐輪台数 1,250
最寄駅 河内松原駅
距離(m) 3,900
最寄り高速 阪和自動車道
最寄りIC 美原北IC
ICからの距離 1,815
入口の数 6
駐車場の数 2
GoogleMap リンク

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