大阪府にあるイオンモール四条畷は、国道1号線(第二京阪道路、片道2車線)と国道170号線(外環状線、片道2車線)という交通の要衝に位置する大型商業施設です。今回は、この施設の交通渋滞パターンについて、実際の観察をもとに詳しく分析してみました。

施設の基本情報と立地条件
イオンモール四条畷は、国道1号線と国道170号線の交差点から南西に位置しており、駐車台数は4300台を誇ります(開店当初は4100台でしたが、その後増設されています)。
予測した車の台数を超えたらすぐに大渋滞
建設前にどれだけの車がどの方向から来るか計算して設計します。この立地ですので国道1号線と国道170号線の各方向別にどれだけの車が集まるかがポイントです。
この予想を超えると渋滞になるのですが、予測を超えるのは年始のバーゲンくらいです。X(旧Twitter)やブログなどでも、年末年始とグランドオープン時を除けばこのイオンモールが渋滞している記事は見当たりませんでした。
かなり上手く予測しています。
駐車場レイアウトの特徴
このイオンモールの特徴として、真ん中に店舗がありその周辺の土地を細かく分けて駐車用にしていることが挙げられます。そのため駐車場の出入口が多数存在しているのが特徴です。
また、北側にはパチンコ店が隣接しています。一応パチンコ店と駐車場は分かれていますが、イオンモールの駐車場内にパチンコ店の看板があるとともに、イオンモールの駐車場を抜けてパチンコ店に行く車を容認しているため、このあたりの土地はイオンが借りているだけなのかもしれません(具体的にはG・H駐車場)。


入庫パターンの詳細分析
その1:国道170号線北側からのアクセス
国道170号線の北側から来る車は、必ず国道1号線へ右折しないと入庫できません。これは、イオンモールが右手に見える形になるものの、直接右折できない構造だからです。
そのためか、国道170号線北側から国道1号線に右折するレーンは2車線あり、これはイオンモールの入庫車両のために2レーンにしていると考えられます。
ちなみに右折後にすぐ片道1車線の側道に入る必要があるため、右折レーンの外側1車線がほぼイオン用になっていると考えられ、現地の信号パターンを見ると17%程度の時間が右折可能になるため、1時間あたり100台程度を想定しているとも思えそうです。
なお、側道にいきなり行かなくても次の信号で左折してもイオンにもいけます。
そうすると、2車線まるまる使えるので、1時間あたり200台程度右折できると考えられます。

その2:効率的な出庫システム
出庫は店舗東側の中央出口がメインになっていそうです。この出口を利用すれば、国道170号線を北側にも南側にも出庫できるとともに、信号制御されており非常にスムーズです。さらにこの中央出口は路線バスも利用しています。170号線経由で国道1号線へ行くこともできますので、全方向この出口で出られます(公式の案内図には書かれていませんが)。
屋上駐車場の真ん中の降り口から一階に降りると自然にこの中央出口に誘導されるので、イオンとしてはこの出口がメインなのでしょう。

設計から見る来客車両の流入パターン

実際の観察から、どこから車が来るのかを調べてみました:
- 国道170号線の北側から:28%
先に述べた通り、国道1号線に右折して入庫する形
- 国道170号線の南側から:32%
左手にイオンモールが見えるため、左折入庫しやすい。左折で入れるタイミングも4箇所あり非常に入りやすいのが特徴

- 国道1号線東側から:8%
国道170号線との交差点を通り過ぎた後、高架道路になるが側道を進み入庫。これを行き過ぎても次の信号を左折したらもう一度入庫できるチャンスがある
- 国道1号線西側から:31%
イオンモール手前の信号のある交差点で右折または側道に入る必要がある(これが1つの信号交差点)。これを通り過ぎるとかなり大回りのUターンが必要
- その他の脇道:1%
地元の人が使うような道
こう見返すと、国道170号線北側からおよび、国道1号線西側から入庫できるチャンスは1度しかなく、それを通り過ぎるとかなりのUターンが必要になります。
キャパシティを超えたときの渋滞パターン
キャパシティを超えると、国道1号線と国道170号線の交差点を起点に混雑する形になります。これは、この交差点から西側側道でイオンモールに入る車と、国道170号線と出庫する車が集中して混雑するためです。

交通制御の改善提案
現状で大問題になっていないので、完全な自己満足の提案ですが...
二重環状線システム
イオンモールの建物を囲む形で2重の環状線になっています。ひとつは店舗のビルのギリギリで一周する道路、もう一つは各駐車場を結ぶための道路です。

改善案:
①空き駐車スペースが見つかるまで建物横をぐるぐる
入庫車両は無条件で店舗ビルギリギリの道路でくるくる移動させ、この道路で駐車場が空くまでの待機列を作る②①のぐるぐるに入れない車は外周で反時計回りでぐるぐる
各駐車場間を結ぶ外側の環状になっている道路では、反時計回りは入庫車両の待機のためぐるぐるしてもらい、外の国道では駐車場待ちさせない③出庫時は外周を時計回りにとにかく流す。各車両が行きたい方面の出口にきたら左折ででる。
外側の環状道路の時計回りは出庫車専用に使用し、各駐車場から出る車は必ずこの道路を時計回りさせて、いきなり国道に車を出して混雑させるのではなく、この道路で一旦渋滞を吸収させる
ハードウェア的な対処案
お金がかかりますが、さらなる改善案として

高架化による直接アクセス
①国道1号線の東側からの入庫動線を他の道路と支障が無いように高架で一気に屋上駐車場へ
国道1号線に国道170号線の北側および国道1号線の東側から1つの車線に集中してこの側道が大渋滞します。そこで、この側道にイオンモールの屋上駐車場に直接いける片道一方通行の道路を高架化で建築し、他の動線の一切織り込みや合流などさせずどんどん屋上に流してしまうのです。東側ブリッジの建設
②国道1号線の西側および国道170号線北側からの侵入のセカンドチャンスでここに出入口を作り高架橋で侵入。
これができれば、国道1号線と170号線の交差点の右折車両が減り信号渋滞の緩和になる。
国道170号線の東側とブリッジを通じて170号線の東側に出入口を作ります。こうすることで左折イン左折アウトするとともに、現状では国道170号線を北側から来る車は現状の国道1号線への右折は不要になり、国道170号線をそのまま南に行き、このブリッジに左折で入る直感的な入庫を促すのです。
総合評価:優秀な事例
ここまで書きましたが、駅から適度な距離があり、国道同士は立体交差であることから、交通要所にも関わらずかなりスムーズに運営できる優秀な事例であると考えます。
あえて難を言うならバスに関してこのイオンモール渋滞に巻き込まれるということもできますが、そもそもこのバスは駅前の大渋滞の方が深刻です。バス会社としては対応順位は低いのかもしれず、またイオンに行くバスも多いことからバス利用者も多いと予測でき、下手にバスの動線を変えるとバスの快適性が逆に減ってしまう可能性もあります。
極めて妥当な運営をしていると言えるでしょう。

おわりに
イオンモール四条畷は、立地条件を活かした効率的な交通システムを構築している好例だと思います。大型商業施設の交通計画において、参考になる事例ではないでしょうか。
年始などの繁忙期を除けば、4300台という大容量駐車場と巧妙な動線設計により、快適にアクセスできる施設として機能していることがわかりました。

施設基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | イオンモール四条畷 |
| 都道府県 | 大阪府 |
| 運営会社 | イオンリテール株式会社 |
| 敷地面積(m2) | 159,000 |
| 延床面積(m2) | 154,000 |
| 賃貸面積(m2) | 74,000 |
| 開業日 | 2015/10 |
| 映画館 | 有 |
| 駐車台数 | 4,300 |
| 駐車料金 | 無料 |
| 最寄駅 | 忍ヶ丘駅 |
| 距離(m) | 1,600 |
| 最寄りIC | 寝屋川北IC |
| ICからの距離 | 4,145 |
| 入口の数 | 23 |
| 駐車場の数 | 10 |
| 駐車場状況リアルタイムURL | リンク |
| GoogleMap | リンク |
追加文献
現地取材記事 https://www.neyagawa-np.jp/photo/shijonawate-traffic-jam-20201021.html
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