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書籍『スマホ失明』は行動経済学の"生きた教材"?

ー 行動の裏にある人間心理をリアルに体感できる一冊 ー

現代人の生活に欠かせないスマートフォン。私たちはなぜ、やめたいと思いながらも手放せないのでしょうか?

川本晃司氏の著書『スマホ失明』(かんき出版, 2022年)は、この問いに医学・脳科学の視点から警鐘を鳴らす一冊です。しかしこの本、行動経済学を学ぶ人にとっても実はかなり"使える"教材だと感じました。

今回は、本書で描かれるスマホ依存の実態を行動経済学の視点から読み解きながら、なぜこの本が"リアルなケーススタディ"として役立つのかをご紹介します。

🧠 スマホ依存と行動経済学の交差点

スマホ失明』を読んでいると、スマホをやめられない心理に、行動経済学でよく扱われる概念と重なる部分が多々見えてきます:

  • 現状維持バイアス - 「このままでも大丈夫」と変化を避けたがる心理
  • ライミング効果 - 通知音が鳴っただけで手が伸びてしまう反応
  • 損失回避 - 「見逃すかもしれない」という不安から手放せない心理
  • 割引率の高さ - 将来の視力低下より今の快適さを優先してしまう判断
  • ナッジの活用 - 環境を変えることで行動を変える工夫
  • フレーミング効果 - 同じ情報でも伝え方で受け取り方が変わる現象

これらの概念が、スマホ依存という現代的な課題を通じて、「人はどうして非合理な行動を取ってしまうのか?」という行動経済学の核心にリアルなかたちで触れることができます。

💡 なぜ"教材"として優れているのか?

抽象理論を現実の行動に落とし込める

例えば「現状維持バイアス」は、単なる理論として読むと「変化を嫌う傾向がある」くらいで終わってしまいます。でも本書では、スマホの長時間利用をやめられない理由として現れ、「ああ、これって自分にもある」と体感的に理解できるのです。

一つのテーマで複数の概念を学べる

行動経済学の多くの入門書は、各理論がバラバラの事例で説明されます。しかし『スマホ失明』では、スマホという一つのテーマに複数の行動原理が交差しており、行動科学的な"統合的思考"を養うのにも向いています。

理論と現実の課題が直結している

スマホ依存は、単なる行動の問題ではなく、健康・発達・人間関係など多層的な影響を及ぼします。これは、行動経済学現代社会でいかに実践的な学問であるかを再認識させてくれます。

📚 学び方の提案:読書+行動分析

この本を使った行動経済学の学び方の例:

  1. まず普通に読む(脳とスマホの関係について知る)
  2. 登場する行動パターンを行動経済学の視点で分析してみる
  3. 自分や周囲の行動と照らし合わせて考えてみる
  4. 「行動変容」の観点で、自分なりの改善策を考えてみる

こうした読み方をするだけで、抽象的な理論が自分ごとになり、行動経済学の理解がグッと深まります。

🎯 電車内での"フィールドワーク"も可能

実際に電車内を見回してみると、10cm以下の距離でスマホを見ている人、歩きながらスマホを見ている人...本書で指摘されている現象がリアルタイムで観察できます。

これって、まさに行動経済学でいう「環境が行動に与える影響」や「社会的証明」の生きた実例ですよね。

✍️ まとめ

スマホ失明』は、行動経済学現実世界に応用するとはどういうことか?を教えてくれる好例です。

スマホ依存という身近で切実なテーマを通じて、 * 「なぜ人は思うように行動できないのか」 * 「どうすれば行動を変えられるのか」

を考える手がかりになるでしょう。

行動経済学を学ぶ人、そして現代人なら誰でも、一度は読んでほしい"実践型ケースブック"です。


📚 書籍情報
スマホ失明』川本晃司 著
かんき出版 / 2022年12月21日発売


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