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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

令和島開発の根本的な矛盾 - 「中規模交通機関頼み」で本当に6万人都市は成り立つのか?

東京都大田区の令和島。羽田空港に近い103ヘクタールの人工島が、いま「港湾・先端テクノロジー実装の場」として大規模開発されようとしています。

令和島の位置図
しかし、この開発計画を詳しく調べてみると、とんでもない矛盾が浮かび上がってきました。

地図はこちら▶(外部リンク)

令和島開発の現状:「とりあえず準工業地域にします」

現在の令和島開発計画を整理すると、実に曖昧です:

決まっていること

決まっていないこと

  • 具体的な街のビジョン(私が確認できた範囲では、詳細なマスタープランや具体的な街のビジョンは公表されていない)
  • 建物の配置や高さ制限
  • どんな企業をどの程度誘致するのか
  • 最終的な就業者・居住者数の想定

つまり、「とりあえず準工業地域にして、あとは民間に任せよう」という印象です。

準工業地域になると何が起きるか:恐ろしい計算

準工業地域指定により、令和島では理論上以下の開発が可能になります:

建築可能な規模

  • 開発可能面積:約80ヘクタール(道路・緑地除く)
  • 建蔽率60%、容積率250%として
  • 総延床面積:約200万平方メートル

想定される施設と就業者数(筆者想定である)

  • 大規模物流センター:40万㎡ → 6,000人

  • IT・AI企業オフィス:40万㎡ → 20,000人

  • 研究開発施設:30万㎡ → 9,000人

  • 港湾関連オフィス:10万㎡ → 4,000人

  • 実証実験施設:30万㎡ → 7,500人

  • 商業・サービス:30万㎡ → 7,000人

  • その他:20万㎡ → 5,000人

合計:約58,500人が島で働く計算

朝の通勤ラッシュ:1時間で2万人以上が押し寄せる

この規模の開発が実現すれば:

  • 島外通勤者:約50,000人(85%が島外居住と仮定)

  • 朝ピーク時(7-9時)集中率:80%

  • 1時間当たりの流入需要:約22,500人

参考:ピーク1時間あたり約22,500人を鉄道で処理しようとすると

車両:10両編成(1本あたり約1,200人輸送可)

本数:2.5〜3分間隔 → 20〜24本/時

駅タイプ:終端型(片方向処理)

で処理する程度の量である。もちろんこの試算に鉄道停止時の混乱は想定していない。

行政が発表している交通改善策を見ると:

基本方針

  1. バス路線の強化大森駅〜臨海部

  2. PTPS(バス優先信号)

  3. MaaS活用

  4. 都市計画道路整備

想定される「追加対策」

これだけでは明らかに不足するため、以下のような対策が必要になるでしょう:

  1. LRT(次世代路面電車:時間当たり15,000人

  2. 水上交通(高速船):品川・豊洲直結で時間当たり5,000人

  3. 専用BRT:バス専用道路で時間当たり8,000人

  4. 大規模駐車場:5,000台以上

ここに根本的な問題がある:「中規模交通の限界」

よく見てください。これらの対策はすべて中規模交通機関です。

なぜ鉄道を避けるのか?

  • JR・私鉄の新線建設:数千億円のコストと10年以上の期間

  • 地下鉄延伸:同様の課題

結果として、「大容量鉄道は無理だから、中規模交通を複数組み合わせよう」という発想になっています。

この戦略の致命的な弱点

1. 信頼性の問題

  • バスやLRTは天候・事故の影響を受けやすい

  • 一つのシステムが止まると、他に大きな負荷

2. 乗り換えの負担

  • 複数の交通手段を使い分ける必要

  • 利用者にとって非常に不便

3. 運営コストの問題

  • 複数システムの維持管理費

  • 統合運営の難しさ

4. ピーク時の処理限界

  • 中規模交通機関は、突発的な需要増に対応できない

  • 遅延が連鎖的に発生

現実的な疑問:本当に2万人/時間を捌けるのか?

LRT、水上交通、BRT、駐車場をフル活用しても:

  • 理論値:28,000人/時間

  • 実際の運用:天候・事故・メンテナンスを考慮すると20,000人/時間程度

つまり、ギリギリか、むしろ不足の可能性が高いのです。

しかも、これらのシステムが完璧に連携して初めて成り立つ前提です。一つでも問題が起これば、即座に交通麻痺が発生します。

他都市の教訓:中規模交通頼みの末路

失敗事例:幕張新都心

  • バス中心の交通計画でスタート

  • 慢性的な渋滞と交通不便

  • 結果的に企業誘致が困難に

成功事例:みなとみらい21

根本的な提言:「交通キャパシティ先行」の都市計画を

私が最も問題だと思うのは、街のビジョンが曖昧なまま開発が進もうとしていることです。

現在の進め方(問題のあるアプローチ)

  1. とりあえず準工業地域に変更

  2. 民間の開発意欲に任せる

  3. 交通問題が深刻化してから対策を考える

あるべき進め方

  1. 交通インフラの限界を先に定める

  2. その範囲内で実現可能な都市規模を設定

  3. 具体的なマスタープランを策定

  4. 段階的な開発を実施

具体的な提案:「3段階開発」で現実的な成長を

第1段階(現在〜2030年)

  • 交通容量:8,000人/時間

  • 就業者数:15,000人程度

  • 主要施設:物流センター + 一部研究開発施設

第2段階(2030年〜2035年

  • 交通容量:15,000人/時間

  • 就業者数:30,000人程度

  • 主要施設:IT企業オフィス拡充

第3段階(2035年以降)

  • 大容量鉄道の整備状況を見て判断

  • 必要に応じて開発規模の拡大

まとめ:今こそ「現実的な都市計画」を

令和島は確かに大きなポテンシャルを持っています。しかし、交通インフラを無視した過大な開発は必ず破綻します。

行政に求めたいこと

  1. 詳細な交通需要予測の公表

  2. 段階的開発計画の策定

  3. 交通インフラ整備と開発のタイムライン明示

私たちにできること

  1. この問題への関心を持ち続ける

  2. 区議会・都議会での議論を注視

  3. 現実的な開発規模への軌道修正を求める

「先端テクノロジー実装の場」というなら、まずはデータに基づいた合理的な都市計画から始めるべきです。

美しい未来図よりも、毎朝確実に通勤できる街。それが真の意味での「令和時代の都市開発」ではないでしょうか。


根拠・参考資料

基礎データ

  • 令和島面積:1.03km²(103ヘクタール)

    • 出典:大田区公式資料「令和島の概要」
  • 現在の用途:工業専用地域(住宅・商業施設建設不可)

    • 出典:大田区都市計画マスタープラン

開発計画の現状

  • 準工業地域への変更検討大田区まちづくり推進部資料

  • 「港湾・先端テクノロジー実装の場」構想大田区公式発表

  • 具体的マスタープラン:筆者調査時点では未確認

建築・就業者数計算根拠

現在の交通計画

  • 大森駅〜臨海部バス路線強化大田区交通インフラ改革プロジェクト

  • PTPS・MaaS導入計画:同上

交通容量計算

  • バス輸送能力:大型バス80人、3分間隔で1,600人/時間/路線

  • LRT輸送能力:6両編成、2分間隔で15,000人/時間(標準値)

  • BRT輸送能力:専用レーン、連節バス使用で8,000人/時間

  • 水上交通:高速船200人、15分間隔で800人/時間/航路

需要計算根拠

  • 通勤集中率:朝ピーク2時間で1日の80%(都市交通調査標準値)

  • 島外通勤率:85%(類似地域の実績値)

比較事例