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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

今後の夢洲開発(日本の都市開発「詰め込み症候群」を乗り越えられるか)

はじめに:日本の都市開発が陥る「詰め込み症候群」

地図はこちら▶(外部リンク)

お台場、幕張新都心、みなとみらい──これらの都市開発には共通する構造的問題がある。それは「オフィス・商業・住宅・エンタメ・MICE」を一箇所に詰め込んで「万能都市」を作ろうとする発想だ。

結果はどうだったか。お台場は長年「陸の孤島」状態が続き、幕張新都心は平日と休日の人口格差が激しい「眠る街」となった。みなとみらいは比較的成功とされるが、当初計画より大幅に縮小せざるを得なかった。

いま、夢洲で同じ過ちが繰り返されようとしている。

夢洲まちづくり構想をもとに筆者改訂

USJ海遊館に囲まれた「完成された観光地」

大阪湾の埋立地夢洲(ゆめしま)。ここには、2025年の関西万博後、IR(カジノを含む統合型リゾート)やMICE、エンターテインメント、商業施設、最先端技術の実証ゾーンなど、あらゆる都市機能を詰め込もうという構想がある。

だが、地図をよく見てほしい。

夢洲の東には、日本屈指のアミューズメント施設ユニバーサル・スタジオ・ジャパンUSJ)」がそびえ立ち、南東には海遊館や観覧車、天保山マーケットプレイスを備える港湾エリアが並び、南側のコスモスクエアでは展示場や住宅地がある。

──すでに「観光・ビジネス・住居が交差するまち」は、もう"そこ"にあるのだ。


■ 似たような"まち"をまた作るのか?

夢洲のまちづくり構想は、あまりに"既視感"に満ちている。

  • MICE(展示・国際会議)インテックス大阪がすでに国内有数の会場を持つ
  • 観光・エンタメUSJという圧倒的ブランドが隣接
  • ライフサイエンスや医療系ツーリズム → 神戸ポートアイランドが先行
  • 最先端技術の実証・都市開発 → 梅田の「うめきた2期」が実験都市として稼働中

こうした都市機能は、本来なら集中させてこそ価値が生まれるものだ。それを分散させて"もう一つの似たような場所"をつくってしまえば、相互に競合し、どちらも中途半端になりかねない。

結果として「新たに推進するIRとカジノ」だけが目立ち、他の機能は"言い訳"に見えてしまうのではないか。


■ 「詰め込み型開発」の失敗パターンを繰り返すな

日本の都市開発には典型的な失敗パターンがある:

お台場・臨海副都心の教訓

バブル期に「21世紀の新都心」として構想され、オフィス、商業、住宅、エンタメを全部詰め込んだ結果、長年「陸の孤島」状態が続いた。ようやく最近になってエンタメ拠点として活性化したが、当初の「業務中枢機能」は結局根付かなかった。

幕張新都心の現実

「国際業務都市」として計画され、MICE、オフィス、住宅、商業の複合開発を行ったが、平日と休日の人口格差が激しく「眠る街」化。東京からのアクセスの良さでイベント会場としては成功したものの、「都心機能」は実現していない。

「詰め込み症候群」の構造的問題

  1. 需要予測の楽観視:「あれもこれも」で複数機能の相乗効果を過大評価
  2. 差別化の欠如:既存都市との明確な違いを作れない
  3. 段階的撤退の困難:一度始めると引き返せない
  4. 維持コストの重荷:多機能ゆえに運営コストが膨大

なぜ同じ失敗を繰り返すのか?

  • 政治的思惑:「何でもできる万能都市」の方が予算獲得しやすい
  • 責任分散:複数機能があれば「どれかは成功する」という発想
  • 前例主義:海外の成功事例を表面的に真似る
  • 長期ビジョンの欠如:20-30年後の姿を真剣に考えていない

夢洲のポテンシャルは"制度を超えられる場所"であること

では、夢洲には可能性がないのだろうか?そんなことはない。

むしろ夢洲には、他の都市にはない"圧倒的な強み"がある。

  • 外周を海に囲まれており、騒音や光害の規制を柔軟に設計可能
  • 新たに整備する人工島であるため、都市インフラや制度を一から設計できる
  • アクセス性を確保しつつ、外部からは"区切られた空間"である

つまり──夢洲は「都市としての法制度を越境できる、実験場」になり得るのだ。


■ 提言:夢洲を「制度越境型スマート特区」にせよ

いまこそ、夢洲にはコンテンツの詰め合わせではなく、ルールを超えた先進都市モデルが必要だ。

🟢 騒音規制の緩和 → 夜間営業・音楽フェス・24時間都市空間

騒音の制限を緩めることで、深夜型経済や文化活動、エンタメの多様化を実現。

🚘 道路交通法の特例 → 完全自動運転専用の道路・ゾーンの導入

人間が運転しない都市交通のモデルケースを先行して試すフィールドに。

🛩 航空法の特区化 → ドローン配送、上空観光、災害対応の常設運用

空を活用した都市インフラを常態化させる先進都市構想。

🧬 医療・ライフサイエンス → AI遠隔医療、実証型のスマートホスピタル

法律や制度上グレーな技術を"合法的に試せる場"として機能させる。


■ 「制度特区」への反論とその限界

もちろん、この提案には現実的な課題がある:

法的ハードル:騒音規制、道路交通法航空法の特例化は国会審議が必要で、実現まで長期間を要する。

近隣への影響コスモスクエア住民への騒音・光害の配慮が不可欠。

安全性の確保:自動運転専用道路やドローン常設運用の安全基準策定は前例がない。

しかし、これらの困難を理由に「安全な詰め込み型開発」を選択すれば、結局は過去の失敗事例と同じ道を辿ることになる。


夢洲は「なんでもあり」ではなく、「実験の場」とすべき場所

都市にはそれぞれ役割がある。同じような施設をもう一つ作っても、それは"複製"でしかない。

都市政策の真価は、「他でできないことを、あえてここでやる」ことにある。夢洲は、法制度上の制限を意図的に緩和することで、"制度を超えた実験都市"としてのブランドを築くべきだ。

段階的アプローチも可能だ: 1. 第1段階:IR・MICEで確実な集客と税収を確保 2. 第2段階:成功実績を背景に制度特区の実現を目指す
3. 第3段階:実証結果を全国展開するモデル都市化


■ 結論:コンテンツの羅列ではなく、"都市の意味"をデザインせよ

今の夢洲構想は、まるで「どこかで見た施設」の集合体だ。だが、この島の真価は、"他都市には絶対にできないことを可能にする"制度設計にある。

都市の未来は、建物ではなく、ルールでつくられる。

夢洲がもし、都市政策として真に挑戦的な構想を持つならば、それは"拠点を増やす"のではなく、"制度を超えるためのフィールド"となることだ。

「安全な複合開発」か「挑戦的な制度実験」か。その選択が、夢洲を「第二のお台場」にするか、「世界初の実験都市」にするかを決める。


参考文献・根拠

都市開発失敗事例の研究

  • 東京都港湾局『臨海副都心開発史』における初期構想と実現状況の乖離分析
  • 千葉県企業庁『幕張新都心開発30年史』に見る当初計画と現実の差
  • 日本都市計画学会『大規模都市開発プロジェクトの検証』(2018)における複合開発の課題分析

制度特区・実証実験に関する先行研究

  • 国土交通省『スーパーシティ構想の可能性と課題』(2020)
  • 内閣府地方創生推進事務局『国家戦略特区の成果と展望』(2019)
  • 経済産業省『Society 5.0実現に向けた規制制度改革』(2021)

夢洲開発計画の公式資料

これらの資料から導出される知見として、日本の大規模都市開発における「機能分散型複合開発」の限界と、「制度革新型開発」の可能性を論証した。

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