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万博後の夢洲開発計画:交通輸送力不足の深刻な現実

関西万博後の夢洲開発について、大阪市は年間3,000万人の来島者を見込む大規模なまちづくり計画を発表している。しかし、この計画には致命的な欠陥がある。交通輸送力が圧倒的に不足しているのだ。

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数字が示す厳しい現実

現在の夢洲へのアクセスは、大阪メトロ中央線(6両編成、7分間隔)が頼りだ。この輸送力は1時間あたり約7,200人。一方、MICE施設でのピーク時間帯には、1時間で約16,400人の移動が予想される。

輸送力は需要の半分以下。これが現実だ。

MICEイベントの特徴は、参加者が特定の時間帯に一斉に移動することにある。朝の開始時間前、昼休み、終了後など、数時間の間に数万人が集中移動する。この「瞬間輸送需要」に対応できなければ、施設の機能は著しく制限される。

「代替交通手段」という幻想

よく聞かれるのが「バスやフェリーで補完すれば」という意見だ。しかし、これは現実を知らない机上の空論である。

  • バス輸送:大型バス1台の定員は約50人。1時間16,400人なら300台以上必要。夢洲への限られた道路で300台ものバスが同時運行できるはずがない。
  • フェリー:大型フェリーでも1便数百人規模。1時間16,400人なら20-30便必要だが、桟橋の処理能力を考えると非現実的。
  • BRT・LRT:結局は道路や軌道の容量制約があり、鉄道に比べて輸送力は圧倒的に小さい。

1時間1万人を超える大量輸送に対応できるのは、大容量の鉄道システム以外にない。これは交通工学の基本中の基本だ。

MICE単体なら「何とかなる」レベル

ただし、MICE施設単体であれば話は変わる。年間来場者数は約1,500万人の予定で、これなら現在の輸送力でも「頑張れば何とかなる」レベルだ。混雑は避けられないが、運用の工夫で大きな問題を回避できる可能性もある。

問題は「その他の開発」

真の問題は、MICE以外の大規模開発計画だ。カジノを含むIR、大型商業施設、エンターテイメント施設など、年間3,000万人という来島者数を前提とした計画が目白押しだ。

これらの開発は、鉄道インフラが整備されるまで実施すべきではない。

なぜなら:

  1. 安全性のリスク:過度の混雑は事故や災害時の避難に支障をきたす

  2. 経済効果の削減:アクセスの悪さは集客力を大幅に低下させる

  3. 都市機能の麻痺:交通渋滞が大阪市全体に波及する可能性

万博の厳戒態勢は持続不可能

万博の交通アクセスとMICEの交通アクセスは根本的に異なる。万博はイベントであり、厳戒態勢を敷きやすいが、MICEは日常業務となる。毎日厳戒態勢を敷けるのだろうか?

そして、万博でも中央線の満員電車が当たり前になっている。これがイベントではなく恒常的に続くのだ。

イベント主催者は混雑会場を選ぶのか?

イベント主催者は来場者をもてなすためにイベントを企画している。来場者が満員電車で来て、帰りは大行列で電車に乗れない。そんな会場を誰が選ぶのか?

ただでさえ、新大阪、梅田、難波、天王寺など大阪の主要ターミナルにもアクセスしない中央線に頼っている現状がある。

国際アクセスの問題

国際会議であるにも関わらず、関西空港へのアクセスはどうだろうか。バスか、せいぜい高速フェリーか。高速フェリーといっても、関西空港のターミナルから関西空港のフェリーターミナルまでバスで移動しなければならない。大きな荷物を持った国際便利用者が本当にこのアクセスで満足するのだろうか?

VIPに相応しいアクセス環境か

MICEやIRは一般の庶民向け施設ではない。VIPが集まる会場にならなければ魅力がない。そのようなVIPは時間や快適性を非常に大切にする。数字の上からも破綻が見えている交通アクセスに、果たしてVIPを誘導できるのだろうか。

段階的開発こそが現実的解決策

提案したいのは以下の段階的アプローチだ:

第1段階:MICE施設の段階的開業と運営ノウハウの蓄積

第2段階:新たな鉄道路線の検討・建設

第3段階:MICE施設の全面オープン

第4段階:交通状況を検証しながら、その他施設の順次開発

行政は現実を直視せよ

大阪市は「何とかなる」という楽観論ではなく、交通工学の現実を直視すべきだ。大規模開発の成功には、それを支える交通インフラが不可欠である。

夢洲が真の国際都市として発展するためには、見栄えの良い計画よりも、地に足の着いた段階的開発が必要だ。交通インフラの整備なしに大規模開発を進めることは、夢洲の未来を危険にさらすことに他ならない。

一度立ち止まって考えてほしい。

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