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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

国土交通省も注目する『Cities: Skylines』とは?街づくりゲームで学ぶ都市計画の面白さ

『Cities: Skylines(シティースカイライン)』をご存知ですか?一見すると普通の街づくりゲームですが、実は国土交通省が公式にMOD(拡張データ)を公開するほど注目されている、奥の深いシミュレーションゲームなんです。

なぜ国がゲームに注目するの?

国土交通省は2023年、このゲーム用の公式MOD「SkylinesPLATEAU」を公開しました。これは日本全国の3D都市データを使って、現実の街並みをゲーム内で再現できるというもの。

つまり、あなたの住んでいる街がゲームの中に登場するかもしれないということです。国がここまで力を入れるのは、このゲームが都市計画や交通政策を学ぶ教材として優秀だからなんです。

普通の街づくりゲームと何が違うの?

リアルすぎる交通システム

一般的な街づくりゲームでは「道路を作れば車が走る」程度の単純さですが、シティースカイラインは違います。

  • 渋滞が本当に起こる:道路設計が悪いと、現実のようにノロノロ運転になります
  • 公共交通が重要:バスや地下鉄がないと、車だらけの街になってしまいます
  • 住民が通勤・通学する:家から職場・学校へ、現実的な移動パターンを再現

MODで現実の街を再現

熱心なプレイヤーの中には、東京駅周辺や大阪の街並みを完璧に再現する人もいます。Google Mapで見慣れた風景がゲーム内に登場すると、まるで空から自分の街を眺めているような感覚になります。

ゲームで都市計画を学べるって本当?

体験できる「交通の悩み」

このゲームをプレイしていると、現実の都市が抱える問題を肌で感じることができます。

例えば… - 住宅地を作りすぎると朝の通勤ラッシュで大渋滞 - 商業地区を一箇所に集めると、そこだけ異常に混雑 - 工業地区からの貨物車で道路がパンク

これらは実際の都市でも起こっている問題そのものです。

「道路を増やしたら渋滞が悪化」の謎

ゲームを進めていると、不思議な現象に遭遇します。

「交通渋滞を解消しようと新しい道路を作ったら、なぜか前より渋滞がひどくなった…」

これ、実はブライスパラドックスという交通工学で有名な現象なんです。

ブライスパラドックスとは?

簡単に言うと「道路を増やすと、かえって渋滞が悪化することがある」という、一見すると理解できない現象です。

なぜこんなことが起こるの?

  1. 新しい道路ができる
  2. みんなが「こっちの方が早そう」と新しい道路を使う
  3. 結果、新しい道路も渋滞する
  4. 全体の流れが前より悪くなる

現実でも、新しい道路やバイパスを作ったのに渋滞が解消されない…ということがよくありますよね。これがまさにブライスパラドックスです。

ゲーム内の住民AIの面白い特徴

ティースカイラインの住民AIには、現実的だけど少し極端な特徴があります:

  • 一度決めたルートは変えない:渋滞していても、最初に選んだ道を使い続ける
  • みんな同じ判断をする:「この道が最短」と思ったら、全員がその道を選ぶ

これは現実とは違います(私たちはGoogleマップで渋滞を避けますよね)。でも、この「極端さ」があるからこそ、交通政策の影響がはっきりと見えるんです。

現実の都市計画との違いは?

もちろん、ゲームと現実には大きな違いがあります:

ゲームにはない現実の複雑さ

  • 住民の反対運動:「うちの前に道路を作るな!」
  • 予算の制約:「この工事には100億円かかります」
  • 土地の権利:「この土地は売ってもらえません」
  • 政治的な判断:選挙や議会での調整

でも、基本的な「流れ」は学べる

複雑な現実問題は再現できませんが、都市の基本的な仕組みは十分に学べます:

  • 住宅・商業・工業のバランス
  • 交通インフラの重要性
  • 人口増加による問題の変化
  • 公共サービスの配置の影響

こんな人におすすめ

都市計画に興味がある学生

大学で都市工学や交通工学を学ぶ前の「入門編」として最適です。教科書だけでは理解しにくい概念を、楽しみながら体験できます。

地方自治体の職員

住民説明会で「なぜこの道路が必要なのか」を説明する際の、視覚的な材料として活用できるかもしれません。

単純にゲーム好きな人

普通のゲームとしても十分楽しめますが、「なぜこうなるんだろう?」と考えながらプレイすると、より深く楽しめます。

専門用語をかんたん解説

用語 意味
OD(オリジン・デスティネーション) 「どこからどこへ移動するか」を示す交通計画用語。朝の住宅地→オフィス街の流れなど
ブライスパラドックス 道路を増やしたのに渋滞が悪化する現象。交通工学の有名な理論
交通インフラ 道路、電車、バスなど、人や物を運ぶために必要な設備の総称
MOD ゲームの拡張データ。建物や機能を追加できるユーザー作成のツール

このゲームの一番の怖さ:「人口減少」の現実

そして、このゲームで最も背筋が寒くなるのが人口減少のシミュレーションです。

人口が減り始めると…

ゲーム内でも様々なきっかけで人口が減少します: - 交通渋滞がひどくて住民が嫌になる - 公共サービス(病院、学校など)が不足する - 環境汚染で住みにくくなる - 税金が高すぎて住民が逃げる

人口減少の「恐ろしい連鎖」

人口が減ると、ゲーム内で次のような連鎖が起こります:

1. 税収の減少 - 住民が減る → 税金が入らない → 市の予算が減る

2. インフラ維持の困難 - 道路、上下水道、電気などの維持費は変わらない - でも予算は減っている → 赤字が拡大

3. 厳しい選択を迫られる - 税金を上げる? → さらに住民が逃げるかも - 道路を削る? → 交通が不便になってさらに住みにくく - 公共サービスを削る? → 病院や学校がなくなって住民が困る

4. 負のスパイラル - サービス低下 → さらに人口減少 → さらに税収減少 → さらにサービス低下…

ゲームで体験する「縮小都市」の現実

この体験、実は現実の日本の多くの地方都市が直面している問題そのものなんです。

現実でも起こっていること: - 人口減少で税収が減る - でも道路や橋の維持費は変わらない - 公共施設の統廃合が必要になる - 商店街がシャッター街になる

人口を増やす「復活作戦」

ゲーム内で人口減少から立ち直るには: - 魅力的な住環境を作る:公園や娯楽施設を充実 - 交通アクセスを改善:渋滞解消、公共交通の充実 - 雇用を創出:新しい産業やオフィスを誘致 - 税制の見直し:適切な税率に調整

でも一度減った人口を回復させるのは、増やすより何倍も大変です。

現実はもっと複雑だけど…

もちろん、現実の人口減少問題はゲームほど単純ではありません: - 少子高齢化による自然減 - 東京一極集中による地方からの人口流出 - 地域の歴史や文化的な価値 - 住民の故郷への愛着

でも、人口減少の基本的な「怖さ」——税収減、インフラ維持困難、サービス低下の連鎖——は、ゲームを通じて肌で感じることができます。

「人口減少って、数字の話じゃなくて、こんなに街全体に影響するんだ…」

そんな実感を得られるのも、このゲームの深い部分です。

まとめ:ゲームから始まる都市への関心

ティースカイラインは、確かに「ただのゲーム」です。でも、プレイしているうちに自然と都市の仕組みに興味を持つようになります。

「なんで駅前はいつも混んでるんだろう?」 「新しい道路ができても渋滞が解消されないのはなぜ?」 「うちの市の交通政策ってどうなってるの?」 「人口減少って、実際どんな影響があるの?」

こうした疑問が湧いてきたら、それはもう立派な「都市への関心」の第一歩。

ゲームを通じて都市計画や交通政策、そして人口問題に興味を持つ——その入り口として、これほど楽しく(そして時には背筋が寒くなるほど)学べるツールはなかなかありません。

国土交通省が注目するのも納得の、奥深い街づくりゲーム。一度プレイしてみると、普段見慣れた街の見方が変わるかもしれませんよ。


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