大都市って、たしかに便利です。電車は数分ごとに来るし、コンビニも病院もカフェも全部そろってる。「ここに住めばすべてが手に入る」――そんな魔法の空間のように思えます。
でも、ちょっと考えてみてください。
もし明日、道路の下で水道管が破裂したら? その修復工事をするには、道路を封鎖しなきゃいけません。でもその道路が朝の幹線道路だったら?
渋滞を避けるために「工事できない」街
実は、人が多すぎて混雑しすぎる都市では、「修理すらできない」ことがあるんです。上下水道やガス管、電気などのインフラが老朽化しても、「交通がマヒするから」「経済活動が止まるから」といった理由で、緊急工事が後回しにされてしまうこともあります。
つまり、「便利すぎる」ことが、「壊れやすい」ことと紙一重になっている。
この問題は決して架空の話ではありません。日本では高度経済成長期に集中的に整備されたインフラが一斉に老朽化を迎えており、今後20年間で建設後50年以上経過する施設の割合が急激に増加することが予測されています。
都市は"便利"だけで生き残れるか?
都市の価値って、「駅が近い」とか「会社が多い」っていう表面的な便利さだけじゃないんですよね。
本当の意味で都市が機能するには:
- インフラが定期的に更新できる
- 緊急時に道路を封鎖しても都市が死なない
- 十分な余白や回避ルートがある
つまり、"余白"と"融通"が都市の命綱なんです。
現実的に見ると、多くの地方自治体では財源や人員の面で、インフラ老朽化対策に十分なリソースを割けない状況があります。維持管理費の予算は1993年度をピークに減少し、現在はピーク時の約半分の予算で対応しているに過ぎません。
限界を超えた都市は、破綻する
理論的には、「都市の集積効果」は人口が増えるほど生産性や効率性が高くなる。企業や人が集まることで多様なシナジーが生まれ、イノベーションが促進されます。
でも、ある閾値を超えると効用はガタ落ちします。しかもそれは、じわじわ落ちるんじゃなくて、ドカンと崩れる。
便利の裏側で、インフラが限界を迎え、修復不能になるとき――それが都市の「終わり方」なのかもしれません。
実際、国土交通省は2040年時点で道路橋の約75%、港湾施設の約66%、河川管理施設の約38%が建設から50年以上を経過すると予測しており、これらのインフラの老朽化により維持・更新コストの負担増大や重大事故の発生が懸念されています。
持続可能な都市に必要なもの
効率性だけを追求するのではなく、「予防保全」の考え方が重要になってきます。不具合が生じてから修繕する「事後保全」ではなく、不具合が生じる前から対策を行う「予防保全」への転換が求められています。
また、都市の設計においても、集積の利益を活かしつつ、混雑や土地価格高騰などの外部不経済とのバランスを取ることが重要です。コンパクトシティの概念も、単なる効率化ではなく、持続可能性を重視した都市構造の形成を目指しています。
私たちが求めるべきは、便利で効率的でありながら、同時に柔軟性と持続可能性を兼ね備えた都市なのかもしれません。

都市成長の収穫逓減グラフ

参考資料
政府・公的機関資料
- 国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来」インフラメンテナンス情報
- 国土交通省「令和2年度国土交通白書」第1章第2節第1項
- 総務省「令和4年版 情報通信白書」インフラの老朽化
- 内閣府「平成24年度 年次経済財政報告」第3章 集積のメリットを活かした地域づくり
- 日本総研「進むインフラの老朽化と今後求められる対策」(2023年7月25日)
学術的背景
- Duranton, G. & Puga, D. (2004). "Micro-foundations of urban agglomeration economies." Handbook of Regional and Urban Economics, Vol. 4
- Batty, M. (2013). The New Science of Cities. MIT Press
- 集積効果と混雑コストのトレードオフに関する都市経済学理論
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