「来月、お宅の隣に保育園ができることになりました」
もしこんな知らせが届いたら、あなたはどう感じますか?
私は最近、この質問をずっと自分に投げかけています。答えが出ないまま、なんとなくモヤモヤした気持ちを抱えて。一言で済むような話じゃないし、白黒つけるのも違う気がする。でも、きっと誰にでも起こりうる葛藤だと思うんです。
保育園は必要。でも、それが"どこにあるか"で見え方が変わる
まず大前提として、保育園が社会にとって必要不可欠な施設であることは、たぶん多くの人が理解しています。共働き家庭の支援、少子化対策、子どもたちの成長の場…どれを取っても重要なインフラです。
でも、それが「あなたの家のすぐ隣」にできるとなったときに、どう感じるか。これは立場によって本当に変わります。
賛成・反対の分かれ目は、生活との"距離感"
たとえば──
我が子を預けたい人は「ありがたい」「近くにあって助かる」と思う。
子どもがいない人は、「騒音が気になる」「送迎の車で道が混むかも」と感じるかもしれない。
この"距離感"は物理的な距離でもあるし、生活的な距離でもある。同じ町内でも、保育園の近くに住む人と、そうでない人では、見え方が全然違います。
こんなこと考えちゃう自分、変かな?
「保育園は必要だと思う。でも、正直、家の隣にできるのはちょっと…」
そう思ってしまう自分に、罪悪感を感じていませんか?「社会のためを思えば賛成すべきなのに、自分のことばかり考えてる」って。
でも、それって実はとても自然な感情なんです。みんな頭では「必要なもの」だと分かっている。でも、いざ自分の生活圏に来ると、複雑な気持ちになる。この現象、あなただけじゃありません。
実際の影響なのか、心の中の不安なのか
こういう時に大事なのは、まず「これは実際に生活に影響があることなのか、それともなんとなくの不安や違和感なのか」を整理することだと思います。
子どもの声が聞こえる → これは「どんな音をどう感じるか」で、人によって全然違う
送迎の車で交通量が増える → これは時間帯や道路の構造によって、実際に困ることがあるかも
街の雰囲気が変わる → 「変化」に対する感情的な反応かもしれないし、実際に影響があるかも
全部を「気持ちの問題」にまとめてしまうと、かえって話がこじれます。実際の影響と心理的な反応を、一度分けて考えてみることが、冷静な判断の第一歩かもしれません。
「総論賛成・各論反対」の正体
保育園ができることで、街が明るくなるかもしれません。新しい家族が引っ越してきて、にぎやかな雰囲気になる可能性もあります。「大きな目で見れば歓迎」──そんな気持ちもあると思うんです。
でも、同時に「個別の場所で見ると心配な部分もある」という現実もある。つまり、「総論賛成・各論反対」がこの問題の特徴なんですよね。
そして、これって別に矛盾した考えではないんです。社会全体のことを考える視点と、自分の生活を守りたい気持ち、どちらも大切な感情です。
自分は"どの立場"から話しているのかを明確にする
もうひとつ大切なことがあります。それは、「自分がどのポジションから意見しているか」をハッキリさせること。
たとえば、
「保育園のすぐ近くに住んでいて、朝夕の交通に不安を感じている住民」としての発言なのか
「町内会の一員として、地域全体のバランスを考えている立場」なのか
「子育て世代として、利用者側の目線で話している」のか
こうして立ち位置が明確になると、話し合いの時にも、ずっと分かりやすくなります。ただ「賛成」「反対」ではなく、「なぜそう感じるのか」「どうすれば一緒にやっていけるか」が見えてくるはずです。
正解のない話だからこそ、考える価値がある
保育園だけでなく、こうした「必要だけど近くに来ると複雑な気持ちになる」ものは他にもたくさんあります。高速道路、コンビニ、病院、老人ホーム…。
利便性と生活環境のバランス、社会の利益と個人の安心──一つひとつが、正解のない議論です。
でも、だからこそ「考えにくいから避ける」のではなく、自分の中でまず整理してみることに意味があると思っています。
そして、「こんなこと考えちゃう自分、変かな?」って思ったときは、思い出してください。それはとても自然で、多くの人が経験する葛藤だということを。
大切なのは、その複雑な気持ちを否定することじゃなくて、丁寧に向き合うことなのかもしれません。
参考:この問題の学術的背景
この記事で扱った現象は、都市計画や公共政策の分野では「NIMBY(Not In My Back Yard)」と呼ばれています。これは「私の裏庭にはいらない」という意味で、社会的に必要な施設であっても、自分の生活圏内への設置には反対する心理を指します。
NIMBYは単なる「わがまま」ではなく、合理的な個人の利益計算と社会全体の利益の間で生じる構造的な問題として研究されています。経済学では外部性(externality)の問題として、社会心理学では集団内外の利益対立として分析されます。
重要なのは、このような感情や反応を「悪いもの」として断罪するのではなく、なぜそのような心理が生まれるのかを理解し、対話と調整を通じて解決策を見つけることです。
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