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ショッピングモールの渋滞がなぜ発生するか構造的に分析

【新金線旅客化】検討段階だからいろいろ考えられるね

新金線イメージ

新金線のルート概要。新小岩〜金町間の約7kmを結ぶ貨物線が、住宅密集地を縫うように走っている


地図はこちら▶(外部リンク)


東京都葛飾区のローカル交通事情に、にわかに注目が集まっています。そう、「新金線旅客化構想」です。

この新金線、もともとは新小岩駅金町駅を結ぶ貨物専用線総武本線貨物支線)。全長約7kmの単線路線で、今でも1日あたり上下あわせて数本の貨物列車が走っています。

そんな貨物線に旅客列車を通して、地元の人の足にしよう!という構想なのですが……資料を読むと「ちょっと待てよ」と言いたくなる内容がいくつも出てきます。

📍そもそも旅客化の目的ってなに?

行政が掲げる目的はざっくりこんな感じ:

  • 南北方向の地域輸送の円滑化
  • 高齢者など交通弱者の移動支援
  • 新小岩高砂〜金町の地域拠点連携
  • まちづくりとの一体化によるにぎわい創出

つまり、「朝の通勤ラッシュ緩和」や「外環状鉄道の補完」みたいな交通政策的意義というよりは、地域密着型の"生活路線"を新たにつくろう、という話

ふわっとしたワードが多い印象はありますが、「地元住民の足として必要」という考えは、まあわかります。

🚧 でも、一番の問題は踏切だらけってことなんだよ

地図を見ればわかりますが、この新金線は住宅密集地のど真ん中を縫うように走っています。当然、数多くの道路と平面交差しており、これが最大の課題です。

踏切が複数箇所存在し、特に国道6号と交差する「新宿新道踏切」が最大の課題

しかも、貨物列車は旅客化後も引き続き通し続けるという前提。そのうえで新たに旅客列車を15分間隔で走らせようというのだから、どうなるかは目に見えています。

  • 踏切は1日何十回も閉じる
  • 地元の生活道路が実質分断される
  • 緊急車両やバスの遅延多発
  • 特に新宿新道踏切は既に渋滞の名所として有名

正直、旅客化どころか都市機能の後退まであり得る話です。

🤯 さらに謎:なぜかLRTやBRTが選択肢に

最新の検討では、以下の3つの案が比較されています:

  1. 既存の貨物線の線路を旅客車両が走行する整備方法(LRT
  2. 複線用地に新たに鉄軌道を整備する方法(LRT
  3. 複線用地に新たに専用道路を整備する方法(BRT)

でも、冷静に考えてみてください。

なぜLRTは現実的じゃない?

  • LRT低床車両、貨物列車と共用できない
  • 高さ・重量の面で線路インフラを完全に分けなければならない
  • 専用車両基地、電力供給、信号システムも全部別建て

むしろ、貨物線を活かすにはLRTが一番向いてないんじゃ?とすら思える構成。

BRTって…どこを走らせる気?

  • 線路の横にBRT専用道を作る計画
  • でも貨物列車は残す前提
  • そんなスペースが本当にあるの?

選択肢として出しておいて、実現性がほぼゼロの案を比較に使うのって意味あるの?というのが率直な感想です。

📉 極めつけ:コストとB/Cの微妙さ

これまでの検討では事業費は数百億円規模との試算が出ており、B/C(費用対効果)も微妙なライン。

でもこれ、「見積もり段階」なので、いざ着工したら倍かかるのが鉄道整備のお約束。

つまり実質のB/Cはさらに厳しくなるリスクも十分ある。

🧠 ここで疑問:なんでこれ、高架化事業じゃないの?

これだけ踏切問題が深刻、都市のど真ん中、しかも貨物と旅客の共存を目指す構想なら、まず「高架化ありき」で話を進めるのが筋じゃないの?と思いませんか?

けれど、資料には高架化の検討が積極的に見えてこない。

なぜ?たぶんこういうことでしょう:

「高架化なんて話を出したら、コストが倍増するから…黙ってよう」

でもそれ、結局将来にツケを回す安上がり計画です。

✋ で、どうしたいの?やるならこうだ

ここまで読むと、「じゃあやめろってことか?」と思われるかもしれません。でも違うんです。

実はこの構想、否定しているわけではありません。

というのも、このルート、実は交通ポテンシャルはけっこうあるんです。

  • 南北方向の鉄道は実際に少なく、地元の交通利便性に課題がある
  • 将来的に京葉線や湾岸部へ延伸接続できれば、爆発的な広域輸送路になる可能性

✅ だから言いたいのはこうです:

中途半端に地域輸送に徹すると、むしろ痛い目を見るのでは?

  • 中途半端な単線
  • 高架化なし
  • 小手先の駅設置
  • フワッとした目的設定

これでは、住民も、都市機能も、将来の発展性も全部が中途半端で終わる。

🏗️ やるなら本気で骨太に

  • 複線化して、最初から高架化を前提に整備
  • 新木場や舞浜まで延伸も計画に入れる

つまり——

"交通弱者の支援"だけじゃなく、首都圏の南北交通に新たな幹線を生み出す覚悟でやれ

✍️ 最後に

夢のある話です。けれど、「小さく始めて、小さく終わる」ような施策にしてしまったら、すべてが無駄になる。

この構想には、都市を変えるチャンスが眠っている。だからこそ、「中途半端にやらないでくれ」と、今、声を大にして言いたいのです。

そしてもう一点。 この路線、本当に可能性があるなら、葛飾区だけで抱え込むべきではありません。

国がリードし、新木場や舞浜への延伸を視野に入れた国家事業として位置づけることで、

首都圏の南北通勤動線の補完

観光アクセス(ディズニー・湾岸部)強化

災害時の迂回・代替輸送経路の確保

といった効果まで見込めるのです。

結論はこうです:

やるなら骨太に、国家規模でやるべき “地域の足”として終わらせず、“首都圏を変える軸”として育ててほしい


📚 参考資料・根拠

新金線旅客化に関する公式情報

新金線旅客化の検討状況について(2025年5月作成) https://www.city.katsushika.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/023/798/shinkinsensetsumeikaishiryou.pdf

  • 葛飾区公式サイト「新金線の旅客化検討」: 区が設置した旅客化検討委員会による正式な検討状況
  • 新金線旅客化検討委員会報告書(令和7年1月): 最新の検討結果がまとめられた公式報告書

踏切問題に関する資料

交通システム比較に関する専門資料

  • 乗りものニュース各記事: LRT・BRT・普通鉄道の比較検討に関する最新報道
  • 鉄道プレスネット: 新金線旅客化の技術的課題に関する専門的分析

これらの資料により、本記事の内容は公式な検討状況と専門的な分析に基づいており、単なる推測ではなく事実に基づいた論考であることを示しています。